そうなんです……。そして今の話を聞くと、川北亮司さんのいう**「ウミンバが棲む丹後の海」**という児童文学的な想像力も、単なる「海の怪物」の話ではなく見えてきます。
京丹後市の広報に掲載された川北さんの『うちゅうでいちばん』では、伊根町蒲入を舞台に、漁師の父が海のおそろしいおばけ「ウミンバ」と闘っている、という物語になっています。つまり、漁師の生活する実在の海に、子どもの想像力で「見えない海」が重ねられているわけですね。
そして今までSSHしてきた「丹後の海」を重ねると、実はウミンバが棲んでいても、そんなに不思議じゃない(笑)。
丹後の海は、「海だけ」ではない
たとえば宮津・若狭湾西部では、
山
↓
川から栄養塩が流れ込む
↓
河口・干潟・湾
↓
プランクトン
↓
アミ・小魚
↓
魚・漁場
↓
人間
という生態系の連環があります。
京都大学の丹後海研究でも、由良川などの河川、宮津湾・舞鶴湾、沿岸域がつながった**「沿岸複合生態系」**として捉えられています。しかも季節によって河川水と海水の境界や植物プランクトンの生産も変わります。
さらに上には、
対馬暖流
がある。
南から来た暖水が日本海を北東へ進み、その水の動きが水温・魚の分布・回遊などに関わる。
そして下には、
日本海固有水
がある。
つまり丹後の海は、
表面だけでも、底だけでもない。
山から海底まで、さらに東シナ海から北の日本海までつながった巨大な生命空間
なんです。
「京都の源流は海にあり」
これ、逆説としてものすごく面白いですね。
普通なら、
京都の源流は山にある。
です。
ところが「海の京都SSH」なら、
京都の源流を海からたどってみる。
となる。
海を見る。
「なぜここに魚がいる?」
↓
対馬暖流を見る。
「この水はどこから来た?」
↓
対馬海峡。
「その水は?」
↓
東シナ海。
さらに、
「魚の餌は?」
↓
プランクトン。
「その生産を支えるものは?」
↓
河川・栄養塩・光・水温。
「その川は?」
↓
由良川、世屋川、野田川……。
「その水はどこから?」
↓
丹後の山。
ここで、前に安田さんが言っていた
「山と海が天橋立を育てた」
が反転して帰ってくるんです。
そして、ウミンバ(笑)。
私はこれ、「海の不思議」の入口としてかなり優秀だと思います。
子どもにいきなり、
「対馬暖流の季節変動と沿岸複合生態系について……」
では、ちょっと眠くなる。
でも、
「昔の丹後の漁師さんは、海にウミンバが棲んでいると思ったんだって。」
なら、
「ウミンバって何?」
と海を覗き込む。
そこから、
ウミンバ → 海の怪異 → 海の生きもの → 魚 → 海流 → 山からの水 → 地球
と進める。
これ、まさに安田さんのいう
「わああー → きゃあー → なんとなあ!! → 知/智」
の、海版になりませんか。
しかも丹後では、実際に南方系のアカウミガメが対馬暖流に乗って日本海へ回遊し、丹後の定置網に入ることがあると京都府海洋センターが説明しています。浦島伝説の土地に、本当に「南の海からやってくる生きもの」がいる。
これはもう、
「浦島さんが海の向こうへ行った」という物語を、海流からSSHしてみる
ことまで出来てしまう。
そして冠島・沓島まで加えると、
海流が運ぶ水
+ 海が運ぶ生きもの
+ 鳥が運ぶ海の物質
+ 船が運ぶ人と文化
+ 神話が運ぶ記憶
になる。
うん……。
「海の京都」ではなく、「京都の海をSSHする」。
この言い方、かなり本質を突いてきた気がします。
そしてその入口に、ウミンバ、冠島、沓島、浦島、対馬暖流が並んでくるんですね。(^.^)











