【① 全国みんなで繋ぐ棚田271、これについて制度の目的、課題、など情報、状況、を下さいな】
いいところに目をつけられましたね。(^.^)
「全国みんなで繋ぐ棚田271」という言葉でお尋ねのものは、農林水産省が2022年に選定した 「つなぐ棚田遺産 ~ふるさとの誇りを未来へ~」 のことですね。全国から271の棚田が選ばれました。以前の「日本の棚田百選」を引き継ぐ取り組みです。
まず大事なのは、これが単に「美しい棚田を選んだ」という話ではないことです。国が問題にしているのは、棚田という景観だけでなく、その景観をつくり、維持してきた農業と地域社会を、どう未来につなぐか ということなんです。
安田さんが取り組まれている上世屋の棚田、里山、天橋立をつなぐ視点とも、かなり深く重なります。
1. 制度の目的――なぜ271の棚田を選んだのか
制度の背景には、棚田が全国各地で荒廃の危機に直面していることがあります。傾斜地の田んぼは、平地の水田に比べて農作業や水路・畦の維持管理に手間がかかります。高齢化と担い手不足が進むと、田んぼだけでなく、景観や地域の共同作業も失われかねません。
農林水産省が示す主な狙いは、次の3つです。
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価値を再発見する。 棚田が持つ食料生産、国土保全、水源涵養、生物多様性、景観、伝統文化などの価値を広く伝える。
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地域の取り組みを評価する。 棚田を守る農業者や地域の努力を見えるようにする。
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地域外の人々とつながる。 観光、交流、商品販売、企業や大学との協力などを通じ、保全を支える人を増やす。
e-Gov 法令検索+1
つまり、棚田の写真を全国に紹介するだけでなく、棚田を守る人々に地域外から応援が届く仕組みを目指しているわけです。
2. 「つなぐ棚田遺産」は何をする制度なのか
ここは重要な区別があります。
| 仕組み | 役割 |
|---|---|
| つなぐ棚田遺産 | 棚田と地域の取り組みを認定・発信する |
| 棚田地域振興法 | 棚田を核に地域振興を進めるための法律 |
| 指定棚田地域・振興活動計画 | 地域が計画を立て、国の支援策などを活用するための枠組み |
| 棚田オーナー制度・企業連携など | 地域を支える人や資金、活動を具体的に生み出す手段 |
「つなぐ棚田遺産」に選ばれたこと自体が、棚田の全域を法的に保護したり、毎年の補助金を自動的に受けられるようにしたりするわけではありません。実際の保全や地域振興には、別の制度や地域の活動を組み合わせる必要があります。
3. 現在の状況――制度はその後どう動いているか
2019
棚田地域振興法が成立
棚田を農業だけの問題として捉えず、地域振興と結びつける法的な枠組みができました。
2022
271の棚田を選定
「つなぐ棚田遺産」が誕生。棚田を守る活動を評価し、国民の理解と協力を広げる取り組みが始まりました。
2025
法律を改正・延長
法律の期限が5年間延長され、移住・定住・二地域居住や都市と棚田地域の交流などを促進する方向が強まりました。
2026
支援策を拡充
令和8年度に「棚田地域振興対策推進事業」が創設されました。地域外の人材の確保・育成、企業やNPO等との連携、保全活動の企画などを支援し、維持管理の負担軽減につなげる狙いです。
2026年度の新事業では、対象となる指定棚田地域の取り組みに対して、1地区あたり年度事業費の2分の1、上限50万円/年の支援が案内されています。対象要件や申請経路は事業の実施要領で確認が必要です。なお、これは271の認定棚田すべてに自動的に支給されるものではありません。
また、農林水産省は2026年7月から11月に「全国棚田行脚!キャンペーン」を実施し、現地訪問を通じた理解促進や誘客にも取り組んでいます。認定から時間がたっても、棚田を訪れ、知り、支える人を増やす方向は続いています。
4. 制度の課題――認定しただけでは棚田は守れない
ここからは制度の趣旨と現場の事情を踏まえた分析です。
① 担い手と労働力をどう確保するか
もっとも根本的な問題です。草刈り、水路の泥上げ、畦の補修、田植え、稲刈り。景観を維持するためには、毎年、実際に手を動かす人が必要です。認定やPRが増えても、作業する人が増えなければ、保全は続きません。
② 景観の価値と農業経営をどう両立するか
棚田は見事な景観を生みますが、景観の美しさがそのまま農家の収入になるわけではありません。米の販売、農作業の負担、獣害対策、農業用施設の維持費をどう支えるかが問われます。
③ 観光客を増やすだけでよいのか
見に来る人が増えても、地域に収入が残らない、農作業の邪魔になる、駐車やごみの問題が起きる、といったことも考えられます。訪問者数だけでなく、地域の人が納得できる交流や、農業への継続的な支援につなげる必要があります。
④ 棚田だけを切り離して守れない
棚田は、水源となる山、森林、水路、集落の暮らし、祭りや食文化とつながっています。田んぼの面だけを保全しても、上流の管理や集落の共同作業が失われれば、持続性は弱くなります。
私がとくに重要だと思うのは、④です。
棚田は「段々になった田んぼ」という形だけではありません。山から水が流れ、土が育ち、人が田をつくり、集落が共同で維持することで成り立っています。棚田を守ることは、棚田を成立させている地域の仕組みを守ることでもあるのです。
5. 上世屋・松尾の棚田は、271の中でどんな位置にあるのか
上世屋・松尾の棚田
京都府宮津市/つなぐ棚田遺産 No.129
農林水産省の選定一覧では、上世屋・松尾の棚田が全国271地区の一つとして掲載されています。選定一覧では、その特徴として「農産物供給」が示されています。
これは、上世屋の棚田が単なる観光景観ではなく、農産物を生み出す場所として評価されていることを示しています。
安田さんがこれまで話してこられた、上世屋の米、松尾の棚田、湧水、山の植生、伊根の酒造りや食文化までつないで考えると、もう一段深い問いが出てきます。
上世屋・松尾の棚田は、何を生み出しているのか。
米だけでしょうか。
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水を受け止め、流域の環境を支える。
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人が山里で暮らし続けるための基盤となる。
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丹後の食文化や農業技術を次世代へ渡す。
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伊根など他地域の食・酒・観光とも結びつく。
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子どもや来訪者が、山・田んぼ・海のつながりを学ぶ場所になる。
これらは、地域で実態を確かめ、データや聞き取りで裏付けていく価値です。認定されたことだけで全部が証明されたわけではありません。しかし、地域を掘り下げる出発点にはなります。
6. 「あいせよ天橋立丹後浦島ロード」と結びつけるなら
私なら、棚田271を「全国の名所リスト」として見るだけでは終わらせません。
安田さんの構想に重ねるなら、こう整理できます。
棚田を入口に、丹後の流域を読む
山・森林・水源
水が生まれ、土が動く
上世屋・松尾の棚田
米をつくり、景観と生きものを育む
集落・食・酒・人の営み
地域の暮らしと産業をつなぐ
伊根・阿蘇海・天橋立へ
山と海の関係を考え、未来へつなぐ
ここで、全国271の棚田と丹後を結ぶ意味が出てきます。
全国の棚田には、それぞれ違う地形、気候、歴史、農法、地域課題があります。全国を一つの型にそろえるのではなく、各地の違いを学び合い、地域外の人が支える仕組みを育てる。これはまさに、安田さんのいう「数珠紐と数珠珠」の考え方に通じます。
そして世界遺産を目指す天橋立にとっても、棚田は脇役ではありません。天橋立の景観を支える山と水、地域の暮らしを考えるための重要な入口になります。ただし、棚田の保全と天橋立の世界遺産登録は別の制度・評価軸です。両者の関係を、具体的な自然・文化・暮らしの証拠によって説明していくことが大切です。
7. これから注目したいこと
私は、今後の棚田政策を見る際には、次の3点を追うと実態が見えやすいと思います。
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人が増えたか。 ボランティアや企業、NPOとの連携が、実際の維持管理を支えているか。
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地域に利益が残るか。 米の販売、交流事業、観光などが、地域の継続的な活動につながっているか。
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棚田を含む地域全体が持続しているか。 水路や森林、集落の共同作業、農業の担い手が保たれているか。
制度は、棚田を守るための「きっかけ」や「道具」にはなります。しかし、棚田を未来につなぐのは、最後は地域で働く人、支える人、学ぶ人のつながりです。
上世屋・松尾の棚田は、全国271の一つであると同時に、丹後の山と海をつなぐ一つの珠でもある。そこを掘り下げれば、「あいせよ天橋立丹後浦島ロード」の中で、棚田をどう位置づけ、どう次世代へ渡すかという具体的な実践につながると思います。











