私からひと言
この最後の語りで、世界遺産運動の意味が少し変わると思います。
「天橋立を世界遺産に登録する」という目標から、もう一歩進んで、
「天橋立を、未来へ育てていく」
という意思に変わるのです。
11人の子どもを育てた晶子さんが、12人目の子どもとして天橋立を見守る。そこには、地球46億年という大きな時間と、人間の一生という小さな時間が重なっています。
そして、何よりよいのは、天橋立を「所有する」のではなく「預かり、育て、次へ手渡す」と語っていること。
このシンポジウムの締めくくりに、ふさわしいと思います。(^.^)
◆1 ありがとう、聴衆に、倉本聡さん、寅さん、伊根の舟屋のおばあちゃん、橋立の駐車場のおばちゃん、伊根満開の酒瓶、松尾の一本桜、、、、それぞれが、描かれた感想メモ!!
はははは!!これはいい!!(^.^)
シンポジウムの登壇者だけでなく、客席にも物語がある。しかも、学者や文化人だけではない。地球の時間を生きる人、土地で暮らす人、旅人、酒瓶、一本桜まで座っている。
それぞれが、晶子さんの「12人目の子ども」の語りを聞いて、帰り際にそっと残した感想メモです。
時空跨ぎシンポジウム
聴衆の感想メモ――天橋立の物語を聞いて
※すべて、このシンポジウムのための創作です。
倉本聰さん
「この認識から、だよ。」
46億年の地球の歴史を、天橋立という小さな場所から見つめる。いいじゃないか。大きなことを語るために、遠くへ行く必要はない。足元を掘ればいい。人間は、自然の主人公じゃない。ほんの一時、そこに居合わせているだけなんだから。
寅さん
「いやあ、まいったねえ。世界遺産ってのは、偉い先生が決めるもんだと思ってたよ。ところが、母親が子どもの将来を心配する話になっちまった。そういうことなら、おいちゃん、俺だって一口乗りたいねえ。ところで、天橋立には、うまい酒はあるのかい?」
伊根の舟屋のおばあちゃん
「天橋立さんは、ええ子やなあ。けどなあ、ええ子に育てるには、周りの者もちゃんとせなあかん。海も、山も、魚も、舟屋も、人も。景色だけ残しても、暮らしがなくなったら寂しいやろ。うちらも一緒に育ててもらわな。」
橋立の駐車場のおばちゃん
「あらまあ、天橋立が12人目の子どもやて!そら、毎日見てる私らも親戚みたいなもんやなあ。けど、お客さんにはちゃんと教えなあかんね。写真だけ撮って帰らんと、松並木も歩いて、海も見て、地元のもんも食べていってな。ほな、駐車料金いただきます!」
「伊根満開」の酒瓶
「私は、米と水と土地の記憶を瓶に詰めています。赤い米、丹後の風土、醸す人の手。私もまた、この土地のつながりから生まれたもの。砂浜連合の乾杯なら、ぜひ私を呼んでください。世界の砂浜が集まったら、世界の酒も集まるのでしょうか。……楽しみです。」
松尾の一本桜
「私は一本で立っています。でも、ひとりぼっちではありません。土の中には根があり、根の周りには菌や虫がいて、空には鳥が来る。一本の木も、世界とつながっているのです。天橋立さん、あなたもそうでしょう。一本の松、一粒の砂から、世界が見えるのですね。」
天橋立の松の一本
「私たちは、砂の上に立っていると思われています。でも、砂の下には長い地球の歴史がある。風に吹かれ、潮にさらされ、根を張ってきました。どうか、松だけを見ないでください。私を支えているものにも目を向けてください。」
阿蘇海
「私は、天橋立に隔てられているようで、つながっています。閉じているようで、外の海とも関係しています。境界とは、分けるだけのものではありません。内と外を結ぶ場所でもあるのです。私のことも、忘れないでくださいね。」
そして、最後の一枚
名前のない子どもからのメモ
「ぼくも、12人目の子どもを見に行きたい。」
お母さんは、天橋立を知っていると言いました。
でも、今日のお話を聞いたら、まだ知らないことがいっぱいありそうです。
砂はどこから来たのかな。
松は、どうしてここに生えたのかな。
海の向こうには、どんな砂浜があるのかな。
今度、歩きに行ってみたいです。
小学四年生
晶子さん、これを読んで、最後にもう一度マイクを持ってください。
「皆さま、ありがとうございました。今日、私は12人目の子どもを紹介したつもりでした。けれども、皆さまのお話を聞いて気がつきました。天橋立は、ひとりで育つ子ではありません。伊根のおばあちゃんも、駐車場のおばちゃんも、松も、海も、そして今日ここに来てくださった皆さまも、この子を育てる仲間なのですね。」
そして、こう締める。
「天橋立を世界遺産にする。それは、天橋立を育ててきた世界を、もう一度大切にすることなのですね。」
いやあ、これはもうシンポジウムの客席が主役になってしまいました。登壇者が語り、聴衆が受け止め、最後に子どもが未来を引き受ける。そんな幕引きです。(^.^)
◆2 はははは!!!!!総合プロデューサーは、5枚の腕章を持つ男でした、、
ははははは!!!!!(^.^)
出ましたね、真打ち登場!!
総合プロデューサー――五枚の腕章を持つ男。
国立公園指導員、稀少生物調査員、自然環境監視員、自然観察指導員、宮津エコツアーガイド。
この五つの腕章、伊達に巻いているわけではありません。
- 春斎の「奇」を掘り起こす。
- 益軒の「景」を現地で確かめる。
- 芭蕉の「心」に問いを投げる。
- 北斎・蕪村の「見る目」を借りる。
- 雪舟の「全体を捉える目」で、山・川・湾・砂州をつなぐ。
- 晶子の「母の心」で、未来へ手渡す。
そして、倉本聰さんのひと言を胸に置く。
「この認識から、だよ。」
総合プロデューサーの演出意図は、こうです。
天橋立を世界遺産にするために、天橋立だけを見ていてはいけない。
天橋立を育てた地球を見よう。
天橋立を愛してきた人々を見よう。
そして、これから天橋立を育てる人々を見よう。
最後に、五枚の腕章を持つ男が客席の後ろから立ち上がる。
「皆さん、今日はありがとうございました。ところで、今日のシンポジウム、これで終わりではありません。次は、皆さんに現地を歩いていただきます。天橋立は、会議室の中だけでは育ちませんから。」
寅さんがひと言。
「おいおい、まだ歩くのかい!?」
会場、大爆笑。
幕。
いやあ、プロデューサーさん。出演者が豪華すぎますが、最後に現場へ連れ出すところが、いかにも五枚の腕章を持つ男です。(^.^)










