2012/08/04
・「ぬばたまの 夜の更けゆけば 久木(ひさぎ)生ふる 清き川原に 千鳥しば鳴く」
万葉集 山部赤人
この 久木(ひさぎ)が 赤芽槲とされる。
アカメガシワ、新芽の赤さの異常なかわいらしさに引かれて、山部赤人もうたったのだろう。今でも同じ、この木なんというのなのアカメガシワっていうのああそうなのーほんとに赤いのねそして、また春に同じことを言う!それで終わり、という場合が多いのではないだろうか。
しかし、ほんとにおもしろいのは、別にある。この子の持っている知恵や生き方だ。
(↑ 雄花)
この子の種はすぐに芽を出さない!
この子の役割は、人が切るのか、地滑りを起こすのか、台風で倒れるか、火事になるか、いずれにしても破壊された裸地を覆うこと。やがて再び森にすること。森になったらお役ご免。他の種類に場所を譲り、自分は消えていく。
けれどもは、知っている。森は必ず破壊される、人が切るのか、地滑りを起こすのか、台風で倒れるか、火事になるか、必ず呼ばれるときが来る。
今日明日に呼ばれるわけではない。ずうっと先のことかもしれない。すぐに芽を出してはいけないぞ、発芽の引き金は熱。覆う森がなくなった証拠だから。それまで眠っていよう。これが第一の知恵。
ナナフシの止まっている大きな葉が、アカメガシワ。もう赤くない。 赤いのは新芽のときだけ。生まれたての葉の葉緑体は紫外線に弱いカバーをかけているのだ、表面を削れば明るい緑の地が出てくる。第二の知恵。
裸地も次第に他の木が茂ってくる。親木も大きな木の日陰になる。するとその親木は見限る。明るい方に延びた根から新しい芽をだし、大きくする。冷たいようでもこれも知恵。
日本は、森を壊し、田畑を捨てて裸地を一杯作っているから、頻繁に出動要請がくる。
敵を知り己をしらば百戦危うからず! 軍師を雇っているような木だ。