2011年ドイツW杯で快進撃する日本女子サッカー代表、そのチームの名が「ナデシコジャパン」。そこで困った!ナデシコってなんだ!どこで見ることができる?そのとき名乗りを上げたのが世屋ナデシコ!
「なでしこはここにさいていまぁす」。
小さな花をパラボラにして激励を送りつつづけた結果、優勝の栄冠。
今年のリオに旅立つチームにナデシコジャパンがいないことは残念なことだけれど、日本中を励ました澤選手に新しい命の報せ。
今年の夏はそれを祝うかのように、せやナデシコ、今年も咲き誇っていますよ。
なでしこといへば青春瞬けり (本多俊子 槐 201411 )
といったところでしょうか。
さて,撫子(なでしこ)を詠んだ万葉歌は以下の26首。
0408: なでしこがその花にもが朝な朝な手に取り持ちて恋ひぬ日なけむ
0464: 秋さらば見つつ偲へと妹が植ゑしやどのなでしこ咲きにけるかも
1448: 我がやどに蒔きしなでしこいつしかも花に咲きなむなそへつつ見む
1496: 我が宿のなでしこの花盛りなり手折りて一目見せむ子もがも
1510: なでしこは咲きて散りぬと人は言へど我が標めし野の花にあらめやも
1538: 萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花
1549: 射目立てて跡見の岡辺のなでしこの花ふさ手折り我れは持ちて行く奈良人のため
1610: 高円の秋野の上のなでしこの花うら若み人のかざししなでしこの花
1616: 朝ごとに我が見る宿のなでしこの花にも君はありこせぬかも
1970: 見わたせば向ひの野辺のなでしこの散らまく惜しも雨な降りそね
1972: 野辺見ればなでしこの花咲きにけり我が待つ秋は近づくらしも
1992: 隠りのみ恋ふれば苦しなでしこの花に咲き出よ朝な朝な見む
4008: あをによし奈良を来離れ天離る鄙にはあれど我が背子を…….(長歌)
010: うら恋し我が背の君はなでしこが花にもがもな朝な朝な見む
4070: 一本のなでしこ植ゑしその心誰れに見せむと思ひ始めけむ
4113: 大君の遠の朝廷と任きたまふ官のまにまみ雪降る…….(長歌)
4114: なでしこが花見るごとに娘子らが笑まひのにほひ思ほゆるかも
4231: なでしこは秋咲くものを君が家の雪の巌に咲けりけるかも
4232: 雪の嶋巌に植ゑたるなでしこは千代に咲かぬか君がかざしに
4442: 我が背子が宿のなでしこ日並べて雨は降れども色も変らず
4443: ひさかたの雨は降りしくなでしこがいや初花に恋しき我が背
4446: 我が宿に咲けるなでしこ賄はせむゆめ花散るないやをちに咲け
4447: 賄しつつ君が生ほせるなでしこが花のみ問はむ君ならなくに
4449: なでしこが花取り持ちてうつらうつら見まくの欲しき君にもあるかも
4450: 我が背子が宿のなでしこ散らめやもいや初花に咲きは増すとも
4451: うるはしみ我が思ふ君はなでしこが花になそへて見れど飽かぬかも
古今和歌集でも
◇ あな恋し 今も見てしか 山がつの かきほにさける 大和撫子
◇ 我のみや あはれと思はむ きりぎりす 鳴く夕影の 大和撫子
近代になっても人気は衰えることなく、
◇なでしこの交れる草は悉くやさしからむと我がおもひゐし 長塚 節
◇紅しぼり緋むくなでしこ底くれなゐ 我にくらべて名おほき花や 与謝野晶子
など名歌多数!
俳句に至ってはその数知れず。
ことに撫子好きなのは
◇撫子や吾に昔の心あり
と詠んだ正岡子規さん
明治25年から
野の道に撫子咲きぬ雲の峰
咲てから又撫し子のやせにけり
なてし子のこげて其まゝ咲にけり
撫し子を横にくはへし野馬哉
なてしこの小石ましりに咲にけり
撫子を折る旅人もなかりけり
なでしこにざうとこけたり竹釣瓶
井戸端に妹が撫し子あれにけり
撫子や人には見えぬ笠のうら
明治26年
撫し子や壁落ちかゝる牛の小屋
撫し子の河原も広し大井河
撫し子の我から伏して咲にけり
朝見れば撫し子多し草枕
花勝に撫し子咲きし山家哉
牛の子の床なつかしや野撫子
撫し子やものなつかしき昔ぶり
喘ぎ喘ぎ撫し子の上に倒れけり
児も居らず愛子の村の野撫子
明治28年
撫子や吾に昔の心あり
撫子や若き女の世すて人
撫子に蝶〃白し誰の魂
明治29年
撫し子に馬けつまづく河原かな
思ひあまり撫子痩せぬ小石原
撫子に白布晒す河原哉
撫子や出水にさわぐ土手の人
明治30年
梅干すや撫子弱る日の盛
蝶一つ撫子の花を去り得ざる
絵屏風の撫子赤し子を憶ふ
撫子は昼顔恨む姿あり
撫子に踏みそこねるな右の足
撫子に雷ふるふ小庭かな
明治31年
撫子の花にあはれや蛇の衣
撫子や上野の夕日照り返す
と他を圧倒する多作ぶり。
その人気は現代でも。
(作品・作者・ 掲載誌・ 掲載年月)
撫子のやうな彼女と思ひしが 稲畑廣太郎 ホトトギス 199909
撫子の彩に野の風従へり 稲畑廣太郎 ホトトギス 199909
植込みの撫子にビル高々と 稲畑廣太郎 ホトトギス 199909
撫子の風に疲れを見せ初むる 稲畑廣太郎 ホトトギス 199909
借景として撫子の小山かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 199909
なでしこの揃ひに父母もゐたまひき 小池文子 馬醉木 199910
野の草にまぎれ撫子ゆれをりぬ 朝妻力 俳句通信 199910
撫子や胸の豊かな聖母像 三代川次郎 俳句通信 199910
撫子や竹人形の胴細き 野口みどり 酸漿 199911
初恋の撫子ほどの記憶かな 富阪宏己 ホトトギス 200001
撫子の高さを視野に児の世界 富阪宏己 ホトトギス 200001
日も風も撫子に来て澄みにけり 富阪宏己 ホトトギス 200001
撫子の花のちりちりちりと咲く 蔦三郎 ホトトギス 200001
撫子を以て点在の彩となす 蔦三郎 ホトトギス 200001
撫子の多く語らぬ主張かな 荒川裕紀 ホトトギス 200001
撫子に溺れたる児の手が上がり 大塚信太 ホトトギス 200001
撫子といふ一草に野がしまり 大塚信太 ホトトギス 200001
撫子のピンクに少女期を語る 石川星水女 ホトトギス 200001
引寄せて引寄せて撫子の仔細 内藤悦子 ホトトギス 200001
撫子の一弁ごとの細工かな 内藤悦子 ホトトギス 200001
撫子の己がやさしさ故揺るる 内藤悦子 ホトトギス 200001
撫子に屈めば見ゆる世界あり 眞木礼子 ホトトギス 200001
撫子の雨意より早く濡れ色に 眞木礼子 ホトトギス 200001
耶蘇島の撫子風に埋れつつ 眞木礼子 ホトトギス 200001
すぐ萎えし男の摘みし撫子は 林直入 ホトトギス 200001
撫子や女性の強くなりたる世 林直入 ホトトギス 200001
美杉みち沿ひに撫子咲く川原 西村早史 ホトトギス 200001
沢道の尽き撫子が咲くところ 西村早史 ホトトギス 200001
頼りなき茎に撫子風情あり 西村早史 ホトトギス 200001
撫子のやさしき丘となりにけり 塙告冬 ホトトギス 200001
高原の駅撫子に降りたちぬ 塙告冬 ホトトギス 200001
撫子に絵心の揺れはじめたる 塙告冬 ホトトギス 200001
撫子や川原をわたる風白し 武井良平 ホトトギス 200001
撫子やホスピス前に小さき花舗 武井良平 ホトトギス 200001
探しゆくボールの先に撫子が 新道廣 ホトトギス 200001
木道の尽き撫子に引き返す 小森葵城 ホトトギス 200001
萎え残る撫子一花二花三花 小森葵城 ホトトギス 200001
撫子の瀬音に傾ぐ築地塀 小森葵城 ホトトギス 200001
撫子に秩父の雨の粒残る 田中藤穂 水瓶座 200002
撫子へ頑張らないのが一番よ 尾上有紀子 わがまま 200002
昨日まで名をなでしこと呼ばれけり 柿原金米 船団 200006
撫子や愛宕まゐりの登り口 中島陽華 槐 200008
撫子に思はず首を傾げたり 宮本道子 酸漿 200010
撫子や花屋が昏き水流し 柳生千枝子 火星 200101
花撫子何時しか校歌和しゐたり 関薫子 百鳥 200112
撫子に夕日あまねししじみ蝶 倭文ヒサ子 酸漿 200112
撫子の重さは不意にくる親展 森あみ子 船団 200112
河原撫子急ぐは水の性なりし 柴田いさを 船団 200202
撫子や十年前と違ふ君 稲畑廣太郎 ホトトギス 200209
野の色といふ撫子は風のもの 稲畑廣太郎 ホトトギス 200209
撫子や遊女の墓は草産して 稲畑廣太郎 ホトトギス 200209
河原撫子もうをはりだつたはず 田口傳右ヱ門 銀化 200211
なでしこの花野の奥の水の音 陣野今日子 風土 200212
撫子は母校の記章庭に咲く 八木葉子 酸漿 200309
紅の濃き河原撫子摘み帰る 小笠原扶美女 築港 200311
撫子や暮色さしくる阿蘇五岳 岡山裕美 雲の峰 200311
伏して咲く撫子北の風岬 舩越美喜 京鹿子 200401
撫子やそのまま飛んで行きさうな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200408
撫子の花を撮さん四つん這ひ 辻恵美子 栴檀 200510
撫子の思ひつめたる目が真つ赤 浦玲良子 六花 200510
絶海の島撫子の一とむらを 江崎成則 栴檀 200511
揺れ通しの大和撫子アニョハセヨ 野村智恵子 八千草 200602
一莖の撫子またも他よそ向ける 瀧春一 常念 200606 病中
撫子や日本の未来どこへ行く 稲畑廣太郎 ホトトギス 200609
撫子に六草の従うてをり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200609
なでしこや可愛かつたと過去形に あさなが捷 空 200702
萩すすき桔梗なでしこ益子焼 鷹羽狩行 狩 200702 浜野和枝句集『益子』序句
撫子を道々摘みて壺に溢れ 稲畑汀子 ホトトギス 200709
撫子を摘みて治めし車酔ひ 稲畑汀子 ホトトギス 200709
撫子の早早咲きて終りけり 松崎鉄之介 濱 200711
撫子の咲いてそこより日本海 稲畑汀子 ホトトギス 200808
撫子を添へて返却文庫本 藤見佳楠子 璦 200810
撫子とその名呼ばれし乙女かな 丑山霞外 炎環 200812
撫子と道にまよいて遇いにけり 宮嵜亀 船団 200903
撫子にまた躓いてをりにけり 小形さとる 槐 200911
撫子や少年が跳ぶ水溜り 柳生千枝子 火星 201001
父に摘む撫子母に摘む野菊 大山文子 火星 201001
撫子や海風匂ふ山の陰 荒木甫 鴫 201001
撫子の風の無人がよかりけり 村上すみ 鴫 201001
撫子のゆれて摩耶山天上寺 谷村幸子 槐 201010
もてあます程に撫子摘みにけり 山田六甲 六花 201010
不動寺に咲きて撫子浄土かな 井上幸子 酸奬 201012
河原撫子うたげのあとの燠にほふ 倉橋あつ子 京鹿子 201101
岳麓の撫子摘みし日の回顧 稲畑汀子 ホトトギス 201109
撫子の咲くや災禍の浄土浜 矢田有年 春燈 201110
なでしこへ径またまがることもして 豊田都峰 京鹿子 201111
撫子を加え別れのブーケとす 土屋青夢 ぐろっけ 201112
乙女らは強くしなやか小撫子 松本アイ ぐろっけ 201112
「かさね」とは八重撫子や翁の日 白神 かさね 201201
返り咲く撫子薄き日を集め 紅露恵子 万象 201203
虫取撫子咲きさきて指までも 窪田佳津子 雨月 201208
撫子や集まつてゐて淋しくて 稲畑廣太郎 ホトトギス 201209
撫子の満開といふ句会かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201209
なでしこの詩を綴るごと咲きゐたり 佐藤喜仙 かさね 201209
なでしこが走るよ蹴るよ熱帯夜 千出百里 沖 201210
河原撫子未明の雨を知らぬごと 松井洋子 ぐろっけ 201211
咲き満ちて河原撫子翳の花 江澤弘子 鴫 201212
なでしこに集へる三十四の瞳 山田六甲 六花 201306
撫子や夢二の描く乙女の瞳 佐藤淑子 沖 201310
紅色のひとすぢ白きなでしこに ことり 六花 201311
風揺れの撫子も寄る誓子句碑 岡田満喜子 ぐろっけ 201401
なでしこといへば青春瞬けり 本多俊子 槐 201411
一面に川原撫子忘れ花 森理和 あを 201501
(↑ 栗田小の里山学習)
せやの里は天橋立・籠神社から車で20分です。
車を降りてゆっくり歩きませんか。