加悦町江山文庫でひらかれている企画展が、すてきですよ。
字は「書く」もの、「打つ」ものと思っている私たちには、不思議な感じになることうけあいます。
取り上げられている短歌や俳句は、それ自体厳選された作品で味わい深いのです。たとえば、
「たのしみは朝おきいでて 昨日まで無かりし花の咲ける見る時」橘曙覧の名歌です。
植田さんの手を経ると、色が見え、香りや音が蘇ってくるようなのです、言葉に籠もる魂を引き出していらっしゃると言うのでしょうか、字で「描いて」いらっしゃるといえばいいのでしょうか。
展覧会のタイトルは水茎春秋。「水茎」は知る人ぞ知るといった言葉。「みずくき」と読んで、筆、毛筆をさします。
□水茎(みずくき)の、岡の葛葉(くずは)を、吹きかへし、面(おも)知る子らが、見えぬころかも
〔語源〕「水茎」は、(1)「瑞茎(みずみずしい茎)」の意で、筆のたとえという。また、(2)古く手紙は梓(あずさ)の枝に玉をつけたものを持たせてやったことから、その使いを玉梓(たまずさ)の使いというが、その梓を「みずみずしい茎」としたことから手紙のことをいい、転じて、筆跡、また、筆の意になったものという。
□意味と用例(1)筆の跡。筆跡。「書道展で見た、かな文字の水茎の跡には、ただただうっとりといたしました」 (2)文字。また、手紙。「今は亡き祖母の水茎の跡を時折眺めては、優しかった人柄をしのんでおります」
この展覧会のほかの展示もおもしろいですよ。
江山文庫、
小さいけれど濃い中身の文学館です。ぜひ訪れてみてください。