宮津エコツアー · 宮津世屋エコツーリズムガイドの会 代表 安田潤さん

宮津世屋エコツーリズムガイドの会 代表 安田潤さん


世屋・高山ガイド部会長 安田潤さん 「世屋の里は、未来に生きる人間への羅針盤」

「ここしか」「今しか」の魅力を「あなただけに」!ができるガイドを目指して…安田さんは、宮津・世屋の里で展開するエコツーリズムの核とも言える存在です。普通、観光や商業の上では、当然のことのように「商品やサービスの良さ・メリット」をアピールします。ですが、安田さんの思いは違いました。
「世屋はいいですよ」ではなく、「どこもいいですね」。自分にとっての、お客様にとっての足下に素晴らしい価値があることに気づく。エコツアーガイドという立場の中にそんな役割を見いだした安田さんは、世屋の里で学んだことを未来に生きる人たちへのメッセージとして伝えつづけています。

取材/宮津市

「羅針盤」とは、具体的にどういうことでしょうか

エコツアーガイドとして考えている、2つのことがありますが、その一つ目がこれです。

社会的歴史的な面からみてそう思っています。ここを忘れたら日本人、根無し草になるそんな危機感を持っています。丹後半島の高地隔絶集落、たくさんあったけれど、今は碑のみ。里人と里と暮らし方みんな、まるごと消えていきました。しかし、これからの人間の生き方に羅針盤はいらないのか、というと、羅針盤のない航海などあり得ません。

かっての里人と里と暮らし方、自然の中でこう暮らしてきたんだ、自然をこう生かしてきたんだ、そこからのメッセージそれは、現代人の持つべき羅針盤の一つだと思います。丹後半島でわずかに生きている世屋の里の、「ここしか」の魅力です。そのメッセージを発する拠点ではないかと思っています。

では、もう一つの考えとは?

2つ目は、世屋の里に保たれている本物だから味わえる自然の「コク」です。どんな植物でも、植物園に行けば見ることができます。昆虫でも動物でも同じです。しかし、それぞれが一緒にいるところを見ることはできるでしょうか。たとえば花なら花、蝶なら蝶、別々です。花と蝶をセットで見ることはできません。

世屋の里では、それらが関わりを持ちながら一緒に生きている姿を見ることができます。氷河時代から生き延びている生き物が、が世屋の里の環境に合わせて生育している植物を食草にして、人の暮らしとともに生き続け、季節の花の上を乱舞している光景!同じ「自然」と言っても、その「コク」「切れ味」は全く違うのです。

世屋の里には、田んぼ・草原・林・湿原・森といった様々な環境を保っています。そのそれぞれにたくさんの命が息づき、お互いに関わり合って豊かな生態系を作っています。その一つ一つが「今しか」の魅力なのです。

エコツアーをする意味とは?

飯尾さん(飯尾醸造さん・富士酢で有名な宮津のお酢や)のところの田植えをしていた時、おっしゃられたことですが「私らがここに入らなかったら、この村の荒廃はどんどん進む」と。飯尾さんは酢を作るという事業をすることで、村の景観を保ち、雇用を産んでいます。それがなかったら、里山は草だらけになります。きちんと保たれている里山には、生き物がたくさん増えてきます。田んぼの土壌の中に生き物が蘇って行く、それが嬉しい、だからやる。活動をしていると生き物はそれに応えてくれます。最初はお客さんを案内してあげるのが嬉しかったけど、いつからかそういう嬉しさ、別の喜びを培ってきました。

収入の面を考えると、シルバー人材センターなどで剪定の仕事をもらったり、学校の講師をしているほうがよほどお金になります。でも、なんでそれをするんだろう?と考えたとき「元気になるから」です。エコツアーをすることで、元気をもらうんだ、そういうことだと思います。

エコツアーガイドの役割とは何でしょうか?

お客さんに来てもらうからには、楽しんでもらわないといけないし、そのためにシナリオもかかないといけません。そういう努力は必要です。ですが、とにかくたくさん人がきたらOKかというと、生活の場だからそうはいかない。楽しんでいただきながら、それを通じて地域の誇りづくりや、そこに関わる人たちの生き甲斐をつくる、「楽しくて、やらせてもらっている」という思いが必要だと思います。

ものづくりにしても、歩くにしても、地域と外側の人とをつなぐという役割、コーディネートすることがエコツーの役割かもしれないと思います。お客様も、ただ来ただけでは見えないものがあります。そのお手伝いをさせてもらえれば嬉しいです。

このページをご覧になった方へのメッセージをお願いします。

エコツアーというのは、自分への問い返しだと思っています。「来て下さい」ということではなく、自分らの暮らしの足下を見つめ直そう、そんな問い返しのような…。だから、「世屋はいいですよ」ではなく、「どこもいいですね」という思いです。

世屋では最近、絵を描いたり、写真を撮ったりする人が増えてきました。宮津・世屋の里は観光地化されていない、絵になる要素がたくさんあります。そんな「ここしか」&「今しか」の世屋の里の魅力を「あなただけに」お伝えできるエコツアーガイドを目指して、部会としても研修を積んでいきたいと思っています。

安田潤(やすだめぐむ:1949年生)

NACS-J自然観察指導員。「丹後のモリアオガエルを考える会」。写歴20年。上世屋に教職を得ました。里の美しさに感動しました。しかし、時まさに高度経済成長に入り、生活様式が激変し、相次ぐ離農、離村などで地域が揺さぶられるころ。そんな時代に対し、何ができるのだろうと悩みながら、青年とともに植えた桜が今盛り、皆さんをお待ちしています。(宮津世屋エコツーリズムガイドの会代表)

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