宮津エコツアー · 「ワサビ食う虫も好きずき!」

「ワサビ食う虫も好きずき!」

「ワサビ食う虫も好きずき!」
2012,3.23
ここたんが開催されていたのは、ちょうどお彼岸。合力の家では、塩ぼた餅を振る舞って頂きました。ちょっと砂糖を添えてもらって。貴重品だった砂糖の思い出話が弾んでいました。
 19日には、お薄もいただきました。Kさんが、都合をつけてセットを携えて参加して下さったのです。囲炉裏端で、しゅんしゅんと湧く茶釜から徳さんの手作りひしゃくで汲み上げられ、手際よく立てられた液体は、ブナの新緑色でゆったりと盛り上がっていました。
お茶請けには手作りの、サクラ餅と椿餅。何とも贅沢な一服をいただき、サクラ餅の葉の塩味のまろやかさを口の中で楽しみながら、心の中では、中学校一年生の国語の教科書に載った、植物学者・岩波洋三さんの話を思い出していました。
それは、「花の香りは昆虫を呼び寄せるためであるが、葉や茎、根や実から出るにおいには、どんな役割があるのだろうか」と問いかけ、「植物のにおいは彼らが進化の過程で身につけた自衛のための武器の一種」であることを明かす説明文教材です。その結論を得るために行った実験や観察の記録がさすがに教科書、精緻でいて簡潔なのです。そして、そのような作用を持つ植物のにおいを人間は昔から、病気の治療や予防、食品の保存に活用してきたとして、例に挙げられていたのが、笹餅、ちまき、そして桜餅。その時は、「教材の準備」にお金がかかったものでした。昭和62年初版の本ですから、年齢で言えば40歳前、今から25年ほど前に中学生、だった方には頭のどこかに記憶が残っていらっしゃるかもしれません。
 植物のにおいの力を試す実験の中で印象的だったのは、ミツバチを使ってワサビのにおいの力を試す実験です。こう書いてありました。「おろしワサビ(5グラム)を入れたシリンダーの中では、一分後にはもう飛ぶ力を失って網の上に落ち、二分後にはひっくり返って動かなくなった。」ミツバチも気の毒なことでしたが、文体の小気味よさには酔いしれたものです。
 さて、そのワサビが、世屋の里の雪ズリの斜面でもう葉を伸ばしはじめています。
それを写真に撮りながら、むらむらとわき起こってきたのが、例によってガイド根性。
『お客さんが見つけました。なんですか。ワサビです!』ガイドとしては、ここで組み立てなければならないじゃありませんか。そこで、お客さんを想定してのワサビ話。
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つかみはこれでしょう! 「ワサビ食う虫も好きずき!」
・・・・ワサビといえば水、砂地などの透水性のところでないと生えません。水温で言えば16℃以上になるところはダメ。ワサビといえば辛い、 根っこも辛けりゃ、葉っぱも辛い、辛さにおいては、ひけをとらないのがタデ、たで食う虫もすきずき、さて、ここで。ワサビ食う虫も好きずき!これを食べる昆虫はいるでしょうか。いないでしょうか、 いるんですよ。モンシロチョウの幼虫(青虫)。あのかわいらしいのが人でも涙を流すこの辛さになんで耐えられるのか、そこがワサビ食う虫も好きずき!なんでかというと、ワサビはアブラナ科の植物だから。キャベツと同じなんですよ。青虫になってかじってみましょうか!
・・・・まず葉の話でうけたとして第二弾は根の話。根を掘り、場所や条件によりますので当然慎重に扱いながら、抜き取った株を見てもらい、感想をもらう。期待するのは、大きいとか小さいとか。山に自生するワサビは、静岡などの栽培ワサビと大きさを比較すれば、地球と月ぐらいの差があります。栽培ワサビを知っている人は、小さいと反応されるはず。「こんなに小さいの?」種類としては同じなのに、大きさという形でこんなに顕著な違いが生まれているのです。
 「それは、何でだろう」というところへ持ち込めば、ガイドの勝ちですね。水ワサビの根は大きいが、畑ワサビや自生種のワサビの根は小さい。その種明かしをするだけです。
 しかし、その前に、方や流水で純粋にワサビだけを栽培する生育環境、方や他の植物と泥土を共有し競争しながら生きる環境とを思い出してもらっておくといいかなあ、と思います。
山の土壌の中には、たくさんの菌が生育しています。その菌と植物とは、共生しあって生きています。片方がなくなれば片方も生存出来なくなる理屈があります。ある種が、ここで自分だけが生育したいという野望を持つとすれば、その実現のためにどのようなことを考えるか、と言うことです。お客さんに質問してもいいかもしれません。貴方でしたらどうされますか?答は容易にでると思います。「共生関係」を壊せばいい!
 素晴らしい、その通りと持ち上げておいて、実はその通り。「ワサビは、周辺の土壌を殺菌し、根に菌を住まわせる必要がある一般的な植物が生えないようにしている物質を根から放出しているんですって。」その物質はなんというのですかと質問される可能性があります。念のため「アリルイソチオシアネート」とメモして持っておくといいかもしれません。しかし、ここでお客さんに百点満点を与えてはいけません。問題はその物質をワサビが出すこととワサビ自身の大きさとの関係です。でも、その答えももう簡単です。
この物質で、周辺の土壌を殺菌し、根に菌を住まわせる必要がある一般的な植物が生えないようにしているが、ワサビ自身もこの物質によって大きくなれない、自家中毒って言うそうですが、生存競争というのは肉を切らせて骨を断つというか、きわどいものがあるとしみじみというと感動が深まると思いますよ。ここまで来ると、ワサビを大きくするためには、自家中毒の原因物質を取り除いてやればいい、つまりアリルイソチオシアネートを洗い流すための仕掛けを作ればいいと言うことになるわけです。流水と透水性の良い土壌がそれなんです。
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あとは、時間に応じてワサビをおろす時は目の細かいサメ肌のおろしで、頭(茎)の方から練るようにすりおろします、等とそれぞれのうんちくを傾けると言うことでどうでしょうか。◇◇◇◇

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