2012/06/11
昔むかし、あるお坊さんが、腹を減らして上世屋にやってきました。上世屋の村の人は、お坊さんがあまりにみすぼらしく腹もすかせているようなので、かわいそうに思い、村の人たちみんなで着物を与え、ごちそうを食べさせ、旅の用意もして差し上げました。
お坊さんは大変喜んで、「お礼にこれをあげよう、」といって、細いネギのようなものをくれました。「おとぎというんだよ」。
それを植えると、次から次へと増え、春の食卓の楽しみになりました。
また、そのお坊さんが、ある村へ行くと、その村の人は、あまりにみすぼらしいので、村へ入れさせませんでした。だから、その村にはおとぎはありません。駒倉の人も、そのお坊さんを親切にもてなしたので、駒倉の村にもおとぎはあるそうです。人に親切にすると、
いいことがあるというお話、いちがぶらり、、、(「地域に根ざした分校教育」 昭和49年 日置中学校世屋神分校 より※一部Y加筆)このおとぎが、今、世屋の里に咲き輝いています。
さて、この話の元には、この植物が、同じ世屋高原でも、分布が限定的という不思議があります。では、このおとぎなる植物の正体はいったい何なのでしょうか。
「シロウマアサツキ」というのが、某先生の見立て。シロウマアサツキ、とすると、白馬岳(しろうまだけ)で初めてみつけられたアサツキの変種で、分布は、中部地方以北の本州、北海道の高山帯に生え、朝鮮半島北部の高山から中国東北部、東シベリアとされています。ムム!ということは、ウスバシロチョウとよく似た身の上?朝日新聞は、『氷河期の落とし子 舞う』という見出しで紹介してくださいました。その表現を借りるならば、『氷河期の落とし子 咲く!』。
しかし、裏を取らないと世間には出せません。調べてみました。島根県の隠岐の島に自生地があると言うことです。この自生地が「氷期遺存種でネギの原種に当たるシロウマアサツキの群生地。北方種の遺存は第四紀の離島化と関係」と紹介されています。
丹後半島と隠岐の島は、同じ日本海気候です。おとぎの生育する丹後半島の高原部は、ブナ帯です。氷河期から今日まで、生き残っている同一種である可能性は大、と考えて良さそうです!
ということは、世屋高原に生き残っている氷河期の落とし子は、『みつがしわ』と『ウスバシロチョウ』につづいて三例目!じゃないですか。あらためて、「氷河期の落とし子、世屋に咲く」