宮津エコツアー · 「木は旅が好き」

「木は旅が好き」

2012/09/10
「木は旅が好き」

・・・・・この詩を書かれたのは、茨木のり子さん。

木は
いつも
憶っている
旅立つ日のことを

一つ所に根をおろし
身動きならず立ちながら

花をひらかせ 虫を誘い 風を誘い
結実を急ぎながら
そよいでいる
どこか遠くへ
どこか遠くへ


ようやく鳥がついばむ
野の獣が実を囓る
リュックも旅行鞄もパスポートも要らないのだ
小鳥のお腹なんか借りて
木はある日 ふいに旅立つー空へ
ちゃっかり船に乗ったのもいる

ぽとんと落ちた種子が
《いいところだな 湖が見える》
しばらくここに滞在しよう
小さな苗木なって根をおろす
元の木がそうであったように
分身の木もまた夢見始める
旅立つ日のことを

幹に手を当てれば
痛いほどにわかる

木がいかに旅好きか
放浪へのあこがれ
漂白へのおもいに
いかに身をよじっているのかが

詩人茨木のり子さんの最後の詩集「拠りかからず」(筑摩書房)に所収。

大ブナの下で、朗読してみたいとおもいます、穂ツツジのそばでも、ヤマナシの木に触れながらでも、読んでみたいと想いました。里山は思考するのに最適の所です。


ちなみに、中学生が一年を終え二年生になろうとする頃に読んほしいと、中学国語教科書一年生に掲載されている作品です。君は花?君は種!鳥はだれ、君かも、彼女かも!身をよじっているのはだれ?

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