日本の自然や生活に根ざした詩人といえば、 田中冬二。
その1つに 「くずの花」
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ぢぢいとばばあが
だまって湯にはひってゐる
山の湯のくずの花
山の湯のくずの花
・・・・・・
露天の湯船の側に迫って咲くクズの花には、じいさんとばあさんの心の通い合いが聞こえるのでしょう。自然が人間を包み込む美しい詩です。
山の湯というのは、越中の黒部峡谷から、一寸側へはいつた谷間にある黒薙温泉でのことといいます。
簡潔な四行詩ですが 「或は書いては削り、あすこまでするのに半年位かかった。制約を極めた作品である。」と作者。
「ぢぢいとばばあが
湯にはひってゐる
だまってはひってゐる
山の湯のくずの花
山の湯のくずの花」
だったり
「ぢぢいとばばあが
だまって湯にはひってゐる
山の湯にくずの花
山の湯にくずの花」
だったり
「ぢぢいとばばあがだまってはひってゐる
山の湯にもくずの花」
だったり、、
“制約を極めた”と冬二さんがおっしゃるその過程を遡るのも楽しいことです。