アジアのモンスーン気候が育む命
~世屋の田圃のカエルたち~
2012,5,6
初夏の太陽がまぶしい真っ昼間から恋の争奪戦を繰り広げるトノサマガエルの開けっぴろげさ、さすがに殿様。さて、世屋の田圃は、とのさまがえる以外にも、ヤマアカガエルやもりあおがえるやしゅれーげるあおがえる、あまがえるなどが利用しています。そして、それぞれ、異なる産卵時期や産卵方法をもっています。
一番に産卵するのが、ヤマアカガエル。雪解けを促す湿った南風の吹く日に田圃に現れて産卵します。争奪戦の活発さに比べて、メスを招く鳴き声はか細く、優しい草笛のよう。卵塊は始め、キャビアのような黒い粒の入ったゼリー状のものがやがてゆるんで広がっていきます。5月ごろにいるオタマジャクシは、ヤマアカガエルのおたまです。
5月の連休ころから、モリアオカエルやシュレーゲルアオカエルが産卵します。このカエルたちは、とのさまやヤマアカたちのように、直接田圃の水の中に産卵はしません。土手に掘った穴や、水面に張り出した枝先に泡のような卵塊を生み付けます。
恋の争奪戦を見ようと思えば、5月の中旬、晴から雨に変わる日の夕方から、明け方をねらうことです。ほぼ当たります。気圧や湿度に反応するのでしょう。とくに、もりあおがえるの多い林に囲まれた山の池では、林の歌やサテライトオス、木の枝を飛び回るオスたちの様子が観察できます。(※筆者おすすめスポット・京丹後市網野町仲禅寺あず谷の池)
彼らが産卵すれば、まもなく梅雨入り。泡の塊の外は乾いてシュークリームのようになっていますが、殻の中はとろとろ、卵はオタマジャクシにかえります。兄弟たちは、500匹程度。その皮を解かすのが梅雨の雨。一気に水へと送り出してくれます。アジアのモンスーン気候が育む命です。今年は、もう産卵しています。梅雨が早いのかもしれません。
ちなみに、せやにはその他、渓流に産卵するカジカカエル 山の水溜まりに産卵するあずまヒキガエル(この争奪戦にIさん、駒倉峠付近の沼で4月中旬に遭遇し撮影したとのこと)、水のしみだす崖などに産卵するタゴカエルたちが棲息しています。
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