丹後の水源林 野間駒倉谷のケヤキの巨樹。
「時知らず 此処に生いたち 枝張れる 老木、、、、」といった風情です。
この歌、
時知らず 此処に生いたち 枝張れる 老木見れば なつかしきかも
山渓の70周年特集・巨樹に聞け に採用されている歌です。
歌人は、旅の歌人 若山牧水さん。
彼の紀行文「みなかみ紀行」にあります。
「なつかしき」にこめた意味が様々に解釈されておもしろいです。この老木とは「樹齢800年をこえるタチヤナギ」どこらにあったものかというと「上野の国より下野の国へ越えむとて片品川の水源林を過ぐ。」ということです、
その片品川!板東太郎・利根川の支流で、
「群馬県と栃木県と福島県の境界に位置する黒岩山に源を発し、片品村を概ね南西方向に流れ、沼田市新町で利根川に合流する。全長60.8km。本流沿いの会津沼田街道は会津に通じ、尾瀬への通路をなす。支流の小川筋は金精峠を経て日光に通じ、菅沼、丸沼、大尻沼がある。中流部には吹割渓谷(片品渓谷)および吹割の滝(国の天然記念物および名勝)、老神温泉、薗原ダム(薗原湖)などがあり、下流部は赤城山北麓と沼田盆地の間を西流し、河岸段丘が発達する。」
という川。
このみなかみ紀行、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で読めますよ。
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群馬県片品村 白根魚苑 利根郡片品村東小川4653
26日生方と別れた牧水は、丸沼の鱒養殖の番小屋に泊めてもらうため東小川村の千明家を訪れ、その日は白根温泉に泊まる。そして翌日、丸沼へと向かうのであるが、歌はその途中でのもの。白根魚苑は千明家が経営し、ニジマスなど100万尾の魚を養殖等している「奥日光のファミリーランド」というのが現在に謳い文句であるようだが、そこの樹齢800年をこえるタチヤナギの下に歌碑がある。文字は牧水の種々の筆蹟から集めたという。
『山桜の歌』には、「上野の国より下野の国へ越えむとて片品川の水源林を過ぐ。」として10首。
下草の笹のしげみの光りゐてならび寒けき冬木立かも
聳ゆるは樅栂の木の古りはてし黒木の山ぞ墨色にみゆ
等の歌と共にあるといいます。
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正面に淺間山が方六里に渡るといふ裾野を前にその全體を露はして聳えてゐる。聳ゆるといふよりいかにもおつとりと双方に大きな尾を引いて靜かに鎭座してゐるのである。朝あがりのさやかな空を背景に、その頂上からは純白な煙が微かに立つてやがて湯氣の樣に消えてゐる。空といひ煙といひ、山といひ野原といひ、すべてが濡れた樣に靜かで鮮かであつた。濕つた地をぴたぴたと踏みながら我等二人は、いま漸く旅の第一歩を踏み出す心躍りを感じたのである。地圖を見ると丁度その地點が一二〇八米突の高さだと記してあつた。
とり/″\に紅葉した雜木林の山を一里半ほども降つて來ると急に嶮しい坂に出會つた。見下す坂下には大きな谷が流れ、その對岸に同じ樣に切り立つた崖の中ほどには家の數十戸か二十戸か一握りにしたほどの村が見えてゐた。九十九折になつたその急坂を小走りに走り降ると、坂の根にも同じ樣な村があり、普通の百姓家と違はない小學校なども建つてゐた。對岸の村は生須村、學校のある方は小雨村と云ふのであつた。
おもはぬに村ありて名のやさしかる小雨の里といふにぞありける
蠶飼せし家にかあらむを壁を拔きて學校となしつ物教へをり
學校にもの讀める聲のなつかしさ身にしみとほる山里過ぎて