「つなぐ棚田遺産」に新たに271カ所 農水省、百選を改定
~宮津市 上世屋・松尾の棚田も~
農林水産省は15日、1999年に認定した「日本の棚田百選」(134カ所)を改定し、「つなぐ棚田遺産」として新たに271カ所を選定した。20年以上前に決まった百選の棚田には、担い手不足などから荒廃している箇所も少なくなく、改めて次代に残したい棚田を選んだ。「新百選」のうち前回に続いての選出は、約35%の94カ所にとどまった。
棚田とは、山の斜面などに階段状に作られた水田のこと。平地より維持・管理が大変な一方、昼夜の温度差が大きくて稲がゆっくり熟すため、上質米ができるとされる。山からの水を蓄えて洪水を防ぐ役割や、「日本の原風景」と呼ばれる景観の美しさなど、多面的な機能も持つ。国は2019年に棚田地域振興法を施行し、棚田周辺の地域振興を後押ししている。
21年11~12月に各都道府県が274カ所を推薦。有識者でつくる選定委員会が、棚田を含む地域の振興にさまざまな人が参加していることなどを基準に、14日の会合で選定した。
世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産からほど近い長崎県平戸市の「春日の棚田」など、有名どころも今回初めて選ばれた。前回百選の134カ所は応募自体が95カ所にとどまった一方、前回百選外からは179カ所の応募があり、新旧の入れ替わりが目立った。
初選出棚田の一つ、岩手県一関市の「金山棚田」は、所有者が高齢化して耕作を断念していたが、櫻井陽さん(29)ら地域の若者有志が共同耕作者となり、復活に力を注いできた。田植えの時期には、市内外の子どもたちを集める。「選定は本当にうれしい。地域内外での見られ方も変わってくると思うので、気を引き締めつつ『農を楽しむ』ことも伝えたい」と喜んだ。前回に続いて選定委員を務めた「棚田ネットワーク」代表の中島峰広さん(88)は「選ばれた各地からは、弾みがつくと期待する声が聞かれる。次の世代に棚田を残していくきっかけになれば」と話した。
選定された棚田は、3月25日に農相の認定を受ける予定。【野呂賢治】
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「つなぐ棚田遺産」関西エリア一覧
滋賀県大津市 上仰木棚田
仰木 平尾の棚田
栗東市 走井棚田
甲賀市 山女原の棚田
今郷棚田
高島市 鵜川の棚田
畑の棚田
京都府京都市 宕陰 越畑・樒原の棚田
福知山市 毛原の棚田
宮津市 上世屋・松尾の棚田
京丹後市 袖志の棚田
大阪府河内長野市 惣代の棚田
能勢町 長谷の棚田
河南町 平石の棚田
持尾の棚田
千早赤阪村 下赤阪の棚田
兵庫県養父市 宮垣の棚田
能座の棚田
別宮の棚田
宍粟市 山田の棚田
飯見の棚田
多可町 岩座神の棚田
香美町 うへ山
奈良県葛城市 葛城山麓地域の棚田
明日香村 稲渕棚田
和歌山県橋本市 芋谷の棚田
紀美野町 中田の棚田
有田川町 久野原の棚田
杉野原の棚田
上湯・あらぎ島
沼の棚田・段々畑
沼谷「天空の棚田」
那智勝浦町 色川の棚田群