宮津エコツアー · 久須美のモリアオガエル

久須美のモリアオガエル

久須美のモリアオガエル  2012.3.30

モリアオガエルの卵塊

 久須美の寺を象徴するのは、椎の古木だろう、重厚感は半端ではない。訃を路傍の看板で知った水口忠雄さんは、その久須美の人だ。寺の庫裏の後ろには池がある!水口さんとの縁はその池だった。
 そのころ私は、丹後のもりあお産卵池マップを作っていた。生物多様性国際条約を結ぼうと相談が始まっていたころであった。里山の生態系の状況を示すバロメーター、モリアオガエルの分布を把握しなければならない事情を個人的に持っていた。
 彼らの産卵場所は、谷の奥の谷津田、ため池、堰堤、沼、防火用水など山につながった止水である。そんな場所を探し、歩いていた。そんな中でも、お寺は重要な目標であった。お寺には、モリアオガエルが似合うのだ。金閣寺にも銀閣寺にもモリアオガエルは産卵している。
 このお寺の池にも、 産卵しているはず、と訪れたのは五月の中ごろ。果たして卵塊は見つかり、その下には水が光っていた。しかし、その水は池の底にわずかにたまっているだけだった。往事の庭の美しさは、想像できた。寺には村の事情がある。無住になって何年になるのだろう。その帰りに、寺の入り口にある田んぼで仕事をされていた老人と話した。彼はいった。池の水のないのは、取り入れ口を止めたから。湿気が庫裏の痛みを早めるからだ。
 理由を聞いて納得した。やむをえないことだ。私も、寺を訪ねた理由を話した。水の上に泡のような塊が産み付けられている。あれは、カエルの仕事。モリアオガエルという種類で、あの中でおたまじゃくしにして、水に落とす、おもしろい習性を持ったやつだ。
 彼もモリアオガエルの思い出を語った。青年のころ、モリアオガエルのことが載った記事を見た。与謝野町の明石の寺だ。それを自転車で見に行った。
 しばらく、もりあおで話を交わした。前年の秋に埋められた池の土の上に、春産卵していた網野町仲禅寺の池の話もした。生むのは毎年同じ場所と決めているらしいんです、など。
 卵塊の変化を見るために、再び訪れた。水が貯まっている! 彼が、池への水路を開けてくれたのだ。水口忠雄さんが、その人だった。彼の田んぼのそばには翌年用の薪が積まれていて、家のかどには、今年のための薪が準備してあり、軒から出た煙突からは、いつも煙が上っていた。おうちに招き入れてくださったときは、美しく立ち上がるくどの炎に見とれた。作ったこんにゃくだ、食ってみてくれ、と新聞紙に無造作にくるんで下さった。語るともなくされた、歩んだ来し方の話は、寺の古木と重なった。
 くどの火が消えた。「里山は人々の温かな心が命を育む空間」であることを、改めて噛み締めている。

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