強い風雨で倒された稲。
長雨で大根も蒔けん、と友人がぶつぶつ。
その大根で思い出したことですが、初冬大根の葉を漬けて刻んだものが食卓には必ずありました。祖父や祖母は、「くもじ」とそれをよんでいました。酸っぱくて苦手ではありましたが、それをなぜ「くもじ」というのか考えもせずに食べていました。
思い立ってしらべてみますと、京都府や阿波地方の他、岡山県阿哲郡、小豆島、飛騨地方でも使われていると方言辞典。聞いてみるとなんでも、徳島の方は「おくもじ」とよんでらっしゃるとか。
今は、方言扱いですが、そのはじめは、宮中の女官たちだったというので「女房ことば」というそうです。
同じものを食べたり使ったりしているのだけれど、身分の高い方と低い方とが同じ言い方をするとそれはそんな下品なものをたべさせたり使わせているのか、それはいかにも具合が悪い、ということになる。そこで、言葉を変えよう思いついたというのが始まり。具体的には、語頭には「お」語尾には「もじ」をつけたというのが、女房言葉。おしゃもじもその類。杓・しゃくをはさんだのです。
ちなみに「く」はくき・茎とのこと。それを「お」と「もじ」でサンドイッチにしたら「くもじ」とか「おくもじ」。清少納言様や小町さんたちも、今日のおくもじは酸っぱいわね、などといいもってお食べになっていたのでしょう。
さて、長雨でも秋は秋、三役のそろいぶみ、
稲、ヒガンバナ、そして白いのはニラ。
ニラも実は日本人と長いつきあい。
大陸北方が原産地で、渡来のさい食糧として持ってこられたもののようです。そのため古事記万葉集に掲載されているのは当然のことで、「かみら、くくみら、みら」と呼ばれていたのがそれ。
伎波都久の岡のくくみらわれ摘めど籠にも満たなふ背なと摘まさね 巻第 14 – 3444 | |
その語変化して「にら」に。そのニラ、食品として栄養価が高く、疲労回復や、整腸作用にも抜群の効果、という優れもの。
男衆にいいもの、おなご衆にもいい、
つかれておられるご様子、 お腹の調子もよくないご様子(※昔の殿上人お姫様などは化粧箱のようなものに灰をいれてそこに用足しをしていただきその様子で健康を診断する係もいらっしゃったということ。浦島太郎は乙姫様のこちらの箱をもらって帰った、開けるなと言われたり、開けたら煙が出たというのはそういう事情という説もありますけれど、、)それでは、「みら」を。
しかし、その匂いは強烈!それを食すのはすこし恥ずかしい。
そこで女房言葉。
いまでも、千葉県上総地方ではニラのことを「ふたもじ・二文字。」とつたわっている.ということです。
◆◆、音二つ、ふた・もじと申し上げて食して頂きましょうと言うことになったようです。
こういう言葉の残り方は、方言周圏論で説明できるということですが、丹後で大根の茎の漬け物を「くもじ」とよんでいるのもどうやら同じ事情のようです。