一本桜は、もともと一本ではなかったんですで、(ほうほう)
昔は四本あったんですで、(ほう)
松尾のお百姓、へえきっつぁんいうただが、子どもを授かったのを喜んで、一人生まれるたびに、元気に育てよと一本ずつうえなったんだ。兄弟はみんなで四人、だから四本兄弟桜だったんですで。(ほうほう)
昔、いうのは、丹後を一色さんが治めとんなころ。そのころは戦国時代ということでなぁ、細川さんが信長さんから丹後をもらいなってなあ、ほで京都のほうから跡取りとその嫁さんを伴ってなあ、跡取りの名前は忠興、若嫁さんの名は玉さんちゅうたらしい(ほほう)
ここは海からようみえるところだ、舞鶴にも田辺城という城をもっとんなったでしょっちゅうこっちはみとんなって、ようめだつ三角形の山がある、神ごとの山に違いない、岳さんのことだわなあ、のぼってみたいものじゃということできとくれたんだ
ええ景色だ ほめとくれたんだ、桜もええ いうて。(ほうほう)
ところが四本ある あれは一本がええ、。
やっぱりゆうさい言う人はわびの心のある人だ。三本は切れ!いいなっただ。(ほんまにぃ)
ところが、子どもが生まれた記念だもんにそんな見てくれのことで植えとらへんわなぁ 切れ言われて悲しいで、。でも殿さんがいいなったことだぁなあ、切らんなんわな、泣く泣くきっただって。(ほうほ)
殿さんいうのはいつでも人のことはかんがえんもんだ、ほでもまあ、一本になって景色はようなった、なんせ宮津の桜が終わってもええ桜がある、忠興さんも玉さんつれて花見に来なっただって。舞鶴もみえようがなぁ、ここがわしらの国だ、いうてよろこびなっただ、(ほうほう)
それにいなあ桜が遅いだけあってここは夏涼しいところだろうが、ちょっと行ったところに味土野ちゅうところがあって修験の山がある。そこでいまでいうたら避暑だわなあ、そういうことでいきなっただで。(へえぇ)
そこへきて本能寺の変だろ、ゆうさいさんとただおきさん、たまさんをおいとくわけにはいかん、どこへ隠そうと言うことになったただけど、ありゃあにわかにおもいついたもんだにゃあ、こういうことがあって馴れたところだったで、味土野、あそこならまあええだろう言うことになっだだあなあ、
玉さんは、それから大阪へいきなって、ガラシャいうキリシタンになんなったいうことだ。玉さん、なんべんもこことおんなったのはほんまだ、そうだで、この桜、「ガラシャ桜」なんだで。(へぇえ!)
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
一本桜にカメラを向けていたら、おばあさんが畦にちょこんとすわっとンなって、そのおばあさんがはなしておくれたことです。
そういうことだったんだなあ、とあらためて桜と海をみて、ええ話おおきに、と礼を言おうとおもって振り返ったら、おばあさんはいませんでした。
!!?!
そうかぁ、おばあさんは、兄弟桜の語り部だったんだ、そうなら、どうだろう、
「とのさんの細川さんは、この景色に桜は邪魔になる、みんな切ってしまえと命令したので兄弟桜はいったんはなくなってしまった、ということにしたららどうだろう、ほしてな、へいきっつぁんのこどもは兵隊にかり出されてみんな帰ってこなかった、その思い出桜を切らされた悲しみはふかかった。それなのに、一本桜があるのはな、こうするんだ、玉さんが復縁を認められて味土野から出るときに、へいきっつぁんの気持ちはよおぉわかった、義父とはいえむごいことをしてしもうた、お詫びに私が一本植えさせてもらうといってお手植えをしておいておくれたんだ、それを村の人たちは大事に大事に守り続けて、いまそれがみられる、だからこの桜はガラシャお手植え一本桜ということにしたら」とおもいました。
さて、2017年春、四月8日の状況。
つぼみまだ固し、咲くのにはあと一週間はかかるかも。