丹後環境シンポジューム 基調講演
『巡れ 四季、里山色に丹後染め』
~連載・その3~
まず、古池カエル!
カエルの側から言えば、餌を採りに出ていて、人の気配を察したものですから、水に逃げ込んだ ということなのです。それはどれか。
ポイントは跳躍力。
それを調査した方があります。やまあか とのさま つちがえる あまがえる
それぞれの水平跳躍力と垂直跳躍力の二つを計測した。
その結果です
ヤマアカガエル 水平57センチ と 垂直23センチ
トノサマガエル 同じく 52センチ と 30センチ
ツチガエル 同じく 35センチ と 15センチ
アマガエル おなじく 27センチ と 11センチ
跳躍力では、ヤマアカガエルとトノサマガエル ほぼ互角
ではどちらか!
水場を離れた林の中で山アカガエルに出会ってもトノサマガエルは見たことがない。
なので、 殿様が 芭蕉カエル としていいでしょう。
殿様カエル、美しいカエルです
ちなみにカエルのこの跳躍力調査の目的はU字溝のサイズの研究。人の暮らしには必要です、しかし、生き物の移動の傷害になっている。
幅35センチ 深さセンチ それ以上だとツチガエルの移動を大きく制限してしまっているわけです。
ふたつめ
閣に座して遠き蛙をきく夜哉
蕪村さんのカエルの特定ポイントは「聞く」です。 。
音楽を楽しむかのように 聞いてらっしゃるようじゃないですか。
聞くに価するのは二種類
まず、カジカガエル、
もうひとつ、 もりあおガエル
ウッディカスタネットと例えられています
森に棲みます。庫裏の池のあるお寺の森は最高の場所。
森のもりあおか、渓流のかじかか!
お寺との縁が深い蕪村さんですから、蕪村カエルはモリ青ガエルとしたいところです。
さて、カエルが鳴くといいますが、鳴くのは雄カエル、
繁殖期に鳴くのです。
雌はその合唱がたけなわになった頃に現れる。
その雌は少ない、奪い合いをします。
同じ時期同じ場所でそれを行う、風物詩中の風物詩、
三つ目、一茶カエルは ヒキガエルです。
彼らは、動きが俊敏ではない、
蛙たたかいが、いかにも相撲を取っているようなので、
カエルの春場所だと、里の人たちは楽しみに待っているのです
俳句の宗匠、一茶さんは当然良く知ってらして、
蛙たたかいありけるにみにまかる、4月20日也けり。
といって詠んだのがこの句。
やせがえる 負けるな 一茶 これにあり
いっぽう、カエルがたくさん生まれてくれる
そのおかげで生きている生き物がいる
世屋のヘビは長いです、
そのシマヘビのお食事。
森青カエルは頭から!
世界保健機関の旗。
医療のシンボルマークになっているヘビなのに、日本では憎まれ役、
蛇打ちし棒を杖とし世を拗ねる
カエルという大事なものを食べるからということなのでしょうか、
ねきとんぼ
この生態もカエルと関係があります
その産卵シーン
飛びながら水面にお尻をつけて産卵しています!
カエルに襲われるから いうのがその理由。
しかし、この貴重な卵を待っている魚がいます。メダカです。
溜池に 蜻蛉集まる 夕日哉 正岡子規さん
自然界のきびしさを重ねると、句の味はいっそう深まるとおもいます。
このカエルたち、
京都府のレッドデータブックでは、ほとんどの種が要注目種選定、近い将来、より高位のランクに選定し直さざるを得なくなるであろうと専門家は見ている
というのが、生息環境の改善が見られない、U字溝もなかなか。
カエルと言うのは生まれた池にカエル習性が強い、なのでカエルと言うくらい、なのに 残念な状況です。
それはそれとして、こういうふうに
日本の里山は文化と自然を結ぶ場として 興味深いものがあります。
例えば いまおもしろいと思っているのが二つのタンポポ 。
まずこれ。
日本の教科書の一ページです。
かえるさんが 言います
「たんぽぽだよ」
もうひとつ、
蕪村さんのタンポポ。
漢文調の散文詩です。
○春艸 路三叉 中に捷径あり 我を迎ふ
春、原っぱの三叉路、その狭い道が故郷への道、私を待ってくれていたかのようです。
○たんぽゝ花咲けり 三ゝ五ゝ
○五ゝは黄に 三ゝは白し
去年もこの道を通って故郷へ帰ったのでした。なつかしさがこみ上げてきます。
タンポポを摘むと、短く折れた茎から乳色の汁がにじみました。
○昔昔しきりにおもふ慈母の恩
○慈母の懐袍 別に春あり
母の懐はあたたかく もう一つの春のようでした
お母さんの郷里 与謝野町で、蕪村さん 幼少期を過ごしました
さて、蕪村さんが 今の日本の教科書のタンポポをごらんになったらどうおっしゃるでしょうか。
これは、なんという花じゃな?
カエルがタンポポと申しており<<<!
はてな そうかな、
蕪村さんは画家でもあります。
わしのいうタンポポはこれじゃ!
ご承知のようにタンポポは、外来と在来と二つある。
色も 形も 違うのです
ぶそんさんのみたざいらいたんぽぽは 果たしてあるか
里山に秋が巡ってきました。
生物多様性保全のうえでも、国際的に重要なこの里山エコロジーと文化、
その充実ぶり、これはじつは、丹後全体全域のものです。
トチの若葉です、
すぎたにるりしじみという可憐なチョウはこの葉しか食べられません。
(続く)