宮津エコツアー · 風起こし、絶滅させるな、百姓百色の手間、

風起こし、絶滅させるな、百姓百色の手間、

「来るなあ と 叫んで、それで止まるものなら叫ぶけれど、しまい込めるものならしまうけれど、台風や田の稲はそうはいかん、来るものは来る、倒れるときは倒れる、起こしておかな、種から芽が出たりするから、な』

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この手間や技術、いまは無くなった百姓百色の手間の一つ、絶滅寸前の技術です。

倒れたら、倒れたでその時は俺が起こしてやる、

この風起こし技術、丹後で伝えるのは、上世屋の小川さんのみ。

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(↑ 小ささ日本一の棚田 稲株の数 50)

稲や生き物と、作りて、お百姓との距離が近かった時代の少年は、こんな詩を残しました。

虫けら  大関松三郎

一くわ
どっしんとおろして ひっくりかえした土の中から
もぞもぞと いろんな虫けらがでてくる
土の中にかくれていて
あんきにくらしていた虫けらが
おれの一くわで たちまち大さわぎだ
おまえは くそ虫といわれ
おまえは みみずといわれ
おまえは へっこき虫といわれ
おまえは げじげじといわれ
おまえは ありごといわれ
おまえらは 虫けらといわれ
おれは 人間といわれ
おれは 百姓といわれ
おれは くわをもって 土をたがやさねばならん
おれは おまえたちのうちをこわさねばならん
おれは おまえたちの 大将でもないし 敵でもないが
おれは おまえたちを けちらかしたり ころしたりする
おれは こまった
おれは くわをたてて考える

だが虫けらよ
やっぱりおれは土をたがやさんばならんでや
おまえらを けちらかしていかんばならんでや
なあ
虫けらや 虫けらや

。。。。。。。。。。。。

今の田は、一枚一枚が大きくなっていますが、一株一株を起こす必要はありません。

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困難な仕事をこなして手間暇から解放してくれる機械も頼もしい。

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けれども、それは一面、メダカやコウノトリをうんでしまいました。

今の時代、絶滅寸前の農作業技術の持つ教育性、環境への感性、生き物との交流、これも貴重です。

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メダカやコウノトリとおなじ、この愛おしい技術は、保全、継承が図られるべきです。

さて、この小川さんの風起こし米、頒布可能、ご希望の方はお問い合わせください。

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〔あすこの田はねえ〕   宮沢賢治

あすこの田はねえ
あの種類では窒素があんまり多過ぎるから
もうきっぱりと灌水(みづ)を切ってね
三番除草はしないんだ
……一しんに畔を走って来て
青田のなかに汗拭くその子……
燐酸がまだ残ってゐない?
みんな使った?
それではもしもこの天候が
これから五日続いたら
あの枝垂れ葉をねえ
斯ういふ風な枝垂れ葉をねえ
むしってとってしまふんだ
……せわしくうなづき汗拭くその子
冬講習に来たときは
一年はたらいたあととは云へ
まだかゞやかな苹果のわらひをもってゐた
いまはもう日と汗に焼け
幾夜の不眠にやつれてゐる……
それからいゝかい
今月末にあの稲が
君の胸より延びたらねえ
ちゃうどシャッツの上のぼたんを定規にしてねえ
葉尖を刈ってしまふんだ
……汗だけでない
泪も拭いてゐるんだな……
君が自分でかんがへた
あの田もすっかり見て来たよ
陸羽一三二号のはうね
あれはずゐぶん上手に行った
肥えも少しもむらがないし
いかにも強く育ってゐる
硫安だってきみが自分で播いたらう
みんながいろいろ云ふだらうが
あっちは少しも心配ない
反当三石二斗なら
もうきまったと云っていゝ
しっかりやるんだよ
これからの本統の勉強はねえ
テニスをしながら商売の先生から
義理で教はることでないんだ
きみのやうにさ
吹雪やわづかの仕事のひまで
泣きながら
からだに刻んで行く勉強が
まもなくぐんぐん強い芽を噴いて
どこまでのびるかわからない
それがこれからのあたらしい学問のはじまりなんだ
ではさようなら
……雲からも風からも
透明な力が
そのこどもに
うつれ……

一九二七、七、一〇、

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