イチョウ茶を知っていますか?銀杏なら知っています。いえ、「萎凋茶」。
なんですか、その「、、」というのは、、、、
ことほどさように、「萎凋・イチョウ」、これは一般的な用語ではありません。
萎凋[いちょう] 草木がなえしぼむこと、、だそうです。
この「萎凋・イチョウ」に思わぬところで出会いました。
神戸大学大学院 黒田慶子さんが、植物防疫 第65巻 第3号(2011年)に発表されていた『ナラ枯れの発生原因と対策』という論文の中です。※https://jppa.or.jp/archive/pdf/65_03_28.pdf
、、、、、、、、、、、、、
《はじめに》
近年,本州の各地の里山でナラ・カシ類やシイ類等の集団枯死「ナラ枯れ」が著しく増加している(図―1)。枯死被害が増加し始めたのは1990年ごろからであり(伊藤ら,1990),原因の解明と防除技術の開発は2000 年ころまでにかなり進んだ(農林水産技術会議事務局,2002)。
・・・そうか!
しかし,ナラ林の経済的価値が低いこと,関東地方で発生がなかったこと,ナラタケ病や酸性雨を枯死原因とする誤った説が流布したこと等から,多くの地域で対策が遅れた。2010年の被害はさらに増加し,関東地方でも被害が確認された。夏季の高温乾燥で罹病木の枯死が促進された例もあると推測されている。
I 病原菌の伝播
・・・・うん!
ナラ枯れとは,糸状菌Raffaelea quercivora(図―2)による萎凋病である(KUBONO and ITO, 2002)。体長5mm程度の養菌性甲虫カシノナガキクイムシ(口絵①)が枯死木内の病原菌を健全木へと媒介する。
、、、、ここです。
「ナラ枯れとは,糸状菌Raffaelea quercivora(図―2)による萎凋病である」
そうか!萎凋病(いちょうびょう)は、植物病理学用語のようで、植物が微生物に感染して突然と枯れてしまう病害の一種 、とありました。
さて、この黒田論文、さらに続きを読むと、こうありました。
「この菌の感染で枯死しているのは,ブナ科の中でブナ属以外の属の樹木である(大住ら,2007;黒田,2008)。コナラ属のナラ類,カシ類のほか,シイ,クリ,マテバシイ等の属も枯死する。」
ここまでは、そうか!
しかし、次の一文には、あれ!?
「ブナ科樹木萎凋病」という病名が提唱されているが,本病でブナが枯れるという誤解があることから,「ナラ・カシ類萎凋病」のような名称が望ましいと考えられる。」
『本病でブナが枯れるというのは誤解』と考えておられる黒田さんの見解について、はてな、と思いました。
というのは、この状況。この木は、萎凋、枯れている。
このフラス、木くずから見て、枯死の原因は、キクイムシによるものだろう
フラスを吹き飛ばしてみると、小さな穴が点々と開いています。
この木は、『ブナ』。
コナラ、ミズナラ、シイ,クリ,マテバシイではない、これも確実!
この木を枯死寸前に追い込んでいるのはキクイイムシ、『ナラ枯れとは,糸状菌Raffaelea quercivora(図―2)による萎凋病である(KUBONO and ITO, 2002)。体長5mm程度の養菌性甲虫カシノナガキクイムシ(口絵①)が枯死木内の病原菌を健全木へと媒介する。』と言います、他の木に広がります。そのカシノナガキクイムシが原因だとしたら、ブナは苦手、ブナも抵抗力を持っている、というのに、その関係が崩れたということになります。
したら、これは、不安です。北近畿随一の面積を誇るブナ林なのですから。
秋の来ない暑い夏、ブナにエアコンの冷気をだれもあててくれません、熱中症は人だけではありません。ブナの森も熱中症。 その一本に現れた異変は、この間進んできた地球温暖化への警告かもしれないと思うと、薄気味悪いものを覚えます。
しかし、他のブナの木には異常は見られません。キクイムシの種類は複数あるようですから、あるいは、養菌性甲虫カシノナガキクイムシではなく、養菌性のない別の種類のキクイムシのアタックによる、その可能性があるかもしれません。
いずれにしても、萎凋病(いちょうびょう)は植物の微生物による感染症、肝心なのは早期発見、早期治療。カシナガか、他のものか、のまずは特定。
樹木病理の専門家の見立てが頂きたいところです。