月刊 かがくのとも ① 「とら きたぐにの もりに いきる」
絵がいい
中身がいい お奨めですよ
対象は6,7才からとするこの作品。作者は、田中豊美さん、発行は2010年1月1日 通巻490号
企画から発行まで三年の力作です。
折り込み付録には、読み聞かせる大人へのメッセージも添えられています。
「トラは獲物を追って生きていくのには広大な自然を必要とします。トラが棲める地域は、草食動物の数などのバランスも保たれ、そこに生息するありとあらゆる生き物たちが健全にいきられる豊かな世界があることを意味します。トラが絶滅したとしても日本に住む私たちは何も変わらないし関係ないと思われるかもしれませんが、地球環境としてみたときに、トラを守ることは二酸化炭素を吸収してくれる重要な森林を守ることにつながり、私たち人間が豊かに生きていく上で非常に重要なことなのです。地球規模で見なければ環境問題は解決しません。」
協力されたNPO法人「トラ・ゾウ保護基金」理事長の川戸久美さんからです。
折から丹後には多数の風力発電機設置プラン。この森に生育する、「トラタカ」、、でない、、クマタカの立場から、このプランが「2030年問題」に名を借りた機に乗じたプランなのかどうなのかを検証する必要がありますね。
「クマタカが絶滅したとしても山を下り町に住む私たちは何も変わらないし関係ないと思われるかもしれませんが、地球環境としてみたときに、クマタカを守ることは二酸化炭素を吸収してくれる重要な森林を守ることにつながり、私たち人間が豊かに生きていく上で非常に重要なことなのです。」
丹後半島にクマタカが棲息していることは、内山山系をクマタカ生息地として、京都府が、京都の自然200に選定していることでも明らかです。
この内山山系から発して半島を貫流し、日本海に注ぐ宇川を迎える依遅ヶ尾山には「鷹巣」という地名があり、剥製標本も地元小学校にあったといいます。
また、太鼓山風力と鳥類との関係について、佐渡でトキ保全にかかわってらっしゃる中津 弘さんが(平成18年当時 大阪府立大学大学院農学生命科学研究科)が、なぜ風力発電所で鳥類の衝突事故が発生するのか、森林性の鳥類全般や猛禽類が風力発電所の撹乱を受けるか、特に猛禽類について衝突リスク行動はあるのか、といった観点から調査され、その概要について平成18年に 「風力発電施設が鳥類に与える影響に関する国際シンポジウム」(日本野鳥の会主催)で講演されています。
その要旨。
<調査地と調査の目的>
太鼓山風力発電所(京都府伊根町)は丹後半島北部最高峰の太鼓山(標高683m)稜線上に位置し、ローター直径50.5m・タワー高50m、出力750kwの風車が計6基、2001年11月から稼働している。周囲は、アカマツ・落葉広葉樹の混交林が主体の山地である。
なぜ風力発電所で鳥類の衝突事故が発生するのか、森林性の鳥類全般や猛禽類が風力発電所の撹乱を受けるか、特に猛禽類について衝突リスク行動はあるのか、といった観点から調査を実施した。その概要について報告する。なお一連の調査は、公的機関や民間事業所によって発注された業務の類ではなく、また補助金も一切受けていない。
<調査方法>
2002年4月から2004年3月を主たる調査期間とし、3つの調査を実施した。
(1) 衝突死体の探索…風車付近で衝突死体を探索する調査を2年間で計98回実施。腐食性の動物による持ち去り、探索時の捕捉率については実験による検証を行わなかった。
(2) 森林性鳥類のセンサス…発電所近辺の林内で2繁殖期に3回ずつ、ポイントセンサスを行った。午前中に所定の地点で5分間滞在し、半径50m以内に出現する鳥類を記録した。2002年には22地点、2003年には30地点で調査を行った。
(3) 猛禽類定点調査…風力発電所から5000m以内の範囲に25個の定点を設け、計106日間の調査を行った。9~16時を中心に観察を行い、出現頻度を解析できるように猛禽類の出現を記録した。設置した定点数は1地点/日である。シーズンごとの500m×500mのグリッドセルにおける出現頻度(回数/観察時間)と発電所からの距離の関係を調べた。今回の講演では主として、出現回数の多かったクマタカについて報告する。
<結果と議論>
(1) 衝突死体の探索…2003年4月に風車近くで負傷したホオジロ1羽を保護(直後に死亡)、風力発電施設への衝突によって負傷したと推測された。同年7月に風車の近くで飛散したトビの羽、カケスの羽を拾得、これらは風力発電施設への衝突によって死傷した(死体の大半は腐食性の動物に持ち去られた)可能性があると考えられた。腐食性の動物による持ち去り、捕捉率、および積雪による死体の隠蔽を考慮に入れずに計算すると、調査期間中の死亡数は施設全体で1.5羽/年、風車単位では0.25羽/基/年となる。ただし、バイアスが補正されていないので、実際の衝突死数は観察されるより多くなる可能性がある。
(2) 森林性鳥類のセンサス…2繁殖期とも、センサス地点から最も近い風車までの距離と地点ごとの出現種数・出現個体数との間には正の相関が得られた(風車から遠い地点ほど多種・多個体が出現する傾向)。これらの相関は2002年の調査結果では有意ではなかったが、2003年の調査結果では有意であった。
(3) 猛禽類定点調査…風力発電所から各グリッドセルまでの距離と、各グリッドセルでの出現回数/観察時間は有意な正の相関を示さず、風力発電所から近い場所ほど出現頻度が低下するという結果は得られなかった。
2003年の繁殖期の成鳥における繁殖行動から、最も風力発電所に近接したペアでは、最も近い風車から1500m以内での営巣が推測され、別のペアでは同様に約2500mでの営巣が推測された。営巣木の探索を行ったが、巣は発見できなかった。後者のペアでは、巣立ち後の幼鳥が観察され、少なくともこのペアについては繁殖が成功していた。前者のペアでは繁殖成否は不明である。
また、風力発電所の建設・稼働前のデータを欠いているため、営巣位置やペアの分布が変化したかどうかは不明である。
クマタカ、ノスリでは風車から最短で50m付近の距離まで接近することが観察された。
太鼓山風力発電所では、大規模な衝突死は発生していないかもしれない。
森林性鳥類の生息密度については、概して風力発電所による撹乱の影響を受けている可能性が示唆された。
「リスク行動」 風車に近接した飛行 探餌行動
また、特にクマタカにおいては、撹乱の影響を受けていない可能性が考えられた反面、風車に近接した飛行が観察された。回転する風車に近接すると回転するブレードの像が網膜上でブレを起こし(モーション・スメア)、ブレードの回避が困難になる可能性が指摘されており、ディスプレイ飛行や採餌行動の最中に他個体や餌動物に注意を奪われている個体ではなお衝突事故の危険性がある。
太鼓山のケースでは、風力発電所の建設にともなう草地・林縁の創出がクマタカの探餌行動を惹きつけている可能性もあるが、クマタカの行動圏内の比較的出現頻度が高く、そしておそらく巣からも近い区域に風力発電所が建設されたことが、観察された「リスク行動」を説明する要因であろう。
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昨秋も、宇野さんが太鼓山山麓でさつえいされています。巨樹の森の息づく丹後半島山塊の王者、クマタカは健在、、、けんざいなのです。
このクマタカは、「1月になるとディスプレイ行動と並行して巣づくりが開始される。産卵期は3~4月。一腹卵数は1卵。主にメスが約1か月半抱卵し、7~8月頃に巣立つ。」と京都府レッドデータ。
寅年、彼らが、子孫を残し、丹後の森の空を飛び続けるためには、最高の自然愛が注げるかどうか、にかかっています。 エコロジーにエコノミーが頭を下げられるか、里にコウノトリの飛来を喜ぶ目は、森の問題にも向けられねばならないでしょう。
山の森と海の森の深く強くつながる丹後の山に持ち込まれた風力発電プラン。
ゴーかストップか、その裁定は、丹後の森に生きずくトトロにお願いできたら、、と思いませんか!
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京都府レッドデータブック2015
野生動物 > 鳥類 > クマタカ タカ目 タカ科
クマタカ Spizaetus nipalensis
京都府カテゴリー 絶滅危惧種
2002年版 絶滅危惧種 2002年版を参照する
環境省カテゴリー 絶滅危惧ⅠB類(EN)
選定理由
留鳥として年中府内に生息する。個体数は少なく、近年減少している。
形態
全長オス72cm、メス80cm。翼開長140~165cm。翼の幅は広くて先端は指状に開き、後縁には膨らみがある。尾は長めで幅が広い。後頭の羽毛は少し長くて冠羽状になる。
分布
東南アジアの森林地帯を主な生息地とし、日本は分布の北限に近い。国内の山岳部の森林帯に生息し、府内の森林にも少数が生息する。
◎府内の分布区域 全域。
生態的特性
比較的険しい山地に生息し、森林内の急斜面にある大きな樹木に営巣する。森の中に住む様々な中小型の動物を獲物として、森林内のけもの道や林縁で狩りを行う。主な餌はノウサギ、ヤマドリ、ヘビなどである。1月になるとディスプレイ行動と並行して巣づくりが開始される。産卵期は3~4月。一腹卵数は1卵。主にメスが約1か月半抱卵し、7~8月頃に巣立つ。巣立ち後の幼鳥は遠方まで行動圏を広げず、翌年の春でも巣から半径1km以内に滞在している。
生息地の現状
北山の比較的険しい地域で、少数が繁殖している。個体数が減少傾向にある上に、繁殖成功率が低下しており、将来激減するおそれがある。
生存に対する脅威
広域林道建設とその後の支道建設に伴う森林伐採などが影響している可能性がある。
必要な保全対策
府内の繁殖環境の情報を詳細に把握する必要がある。
関係法令
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(国内希少野生動植物種)
文献 日高(監)(1996)、京都府(1993)、高野(1982)
執筆者 須川恒、和田岳
年明けメールに児童文学者の川北亮司さん、埼玉からこんなメッセージを送ってくれました。
現代の安全安心快適劇場の夢をささえる機械や電気、そのエネルギー源の化石燃料には問題が多いよとは早くから指摘されていたことですが、いよいよごまかしがきかなくなってきた、しかし、そのどたばたのなかで地域の宝物がその犠牲になる、これのおかしさは、こどもにもわかることなんですし、しっかりと、しかし楽しく教えていく必要がありますね。