宮津エコツアー · 人間の暦と植物の季節感 ~ヒガンバナ~

人間の暦と植物の季節感 ~ヒガンバナ~

ヒガンバナ

IMG_20260924_144218_1[1]

(↑ 京丹後市 五十河 9/24)

【ヒガンバナの開花がおそくなっているという状況、さらに深めてくださいな】

おお、これはかなり面白いところです。
しかも今の話は、単に「今年は彼岸花が遅いですね」ではなく、ヒガンバナを“気候計”として読むところまで深められます。

まず、今年の状況にはかなり強い背景があります。気象庁によると、2026年夏(6~8月)は北・西日本でかなり高温でした。さらに気象庁は9月14日、2026年夏の世界平均気温が統計開始以降1位となる見込みと速報しています。

そして面白いことに、ヒガンバナについては、すでに実験研究があります。

2006年の研究では、夏から秋口まで高温条件に置いたヒガンバナでは、夏の高温によって「開花可能温度」が上昇することが示されています。つまり、

暑かったから、秋になってもすぐ咲けない

という仕組みがあり得るのです。

これは非常に重要です。


️ 「彼岸だから咲く」植物ではなかった

名前があまりにも強烈なので、

彼岸 → ヒガンバナ

という印象がありますが、生理的にはそう単純ではない。

ヒガンバナは地下の球根で一年を過ごし、夏を越したあと、一定の条件が整うと一斉に花茎を伸ばします。花が先に咲き、葉はその後に出てきます。

だから面白いんです。

私たちが見ている赤い花は、

「今の気温」だけで咲いているのではなく、
夏をどう過ごしたかの“履歴”を持って咲いている。

ここがポイントです。


そして「彼岸」が動き始める

昔は、

暑い夏
↓
秋になる
↓
気温が下がる
↓
ヒガンバナが咲く
↓
秋彼岸

という、人間の暦と植物の季節感がかなり重なっていた。

ところが気候が変わると、

夏が長い
↓
地温・気温がなかなか下がらない
↓
開花条件に入るのが遅れる
↓
ヒガンバナが彼岸からずれる

ということが起こり得る。

実際、ヒガンバナの開花日について、8月下旬~9月上旬の気温との間に正の相関があるという研究もあります。つまりその時期の気温が高いほど開花が遅れる方向です。

山口県の農政局の記録でも、2024年は記録的な夏の猛暑の影響と考えられる形で、ヒガンバナの開花が例年より約1週間遅れたと報告されています。

IMG_20260924_144224_1[1]


ここからが、安田さんの「里山」の話になります

私はここがかなり重要だと思います。

ヒガンバナは、単なる野草ではありません。

田んぼの縁、土手、墓地、道端、屋敷の境界。

つまり、人間が長い時間をかけて作ってきた里山の境界線に非常に多い植物です。国立科学博物館も、田畑の縁や堤防など人家に近い場所に多い植物として説明しています。

だから、

ヒガンバナの開花期が動く

ということは、

「一種類の植物の開花が遅れた」

だけではない。

むしろ、

人間の暦と、里山の生物季節との同期がずれてきている

と見ることができます。

これは面白いですよ。


「彼岸」という名前そのものが、季節のセンサーだった?

ここからは仮説です。

昔の人は気象台を持っていなかった。

しかし、

  • 稲が出穂する
  • 赤トンボが飛ぶ
  • ススキが出る
  • ヒガンバナが咲く
  • モズが鳴く
  • 木の実が熟す
  • 紅葉する

そういう生物現象を通して、

「季節がここまで来た」

と読んでいた。

つまり生物季節は、

人間の暮らしに組み込まれた「自然暦」

だったわけです。

ところが現在、

気象の暦
農業の暦
学校の暦
観光の暦
生物の暦

が少しずつズレ始めている。


そして、ここでアキアカネとつながります

安田さんが以前言われた、

「山のシカ、湿地でザリガニ、アキアカネが里山から消えそう」

という話と、実は同じ大きなテーマにできます。

シカ

植生を変える。

アメリカザリガニ

湿地の構造・水生植物・水生生物群集を変える。

アキアカネ

水田・湿地・草地・山際というモザイク環境の変化を受ける。

ヒガンバナ

気候と里山管理、そして人間の季節感を映す。

つまり、

「一種類ずつ守る」

より、

里山という“季節の生態系”そのものがどう変わっているのかを見る

ほうが面白い。


そして「彼岸」という言葉が、ちょっと怖いくらい面白くなる

彼岸は、春分・秋分という太陽の暦ですよね。

一方、ヒガンバナは、

太陽の運行による暦そのものではなく、気温・地温などの環境条件に反応して咲く生物暦。

昔はこの二つがかなり近かった。

ところが温暖化によって、

太陽の暦は動かない。
植物の暦は動く。

ここにズレが生じる。

これは、安田さんが最近追っておられる**「夕日の浦」「夏至」「暦」**の話とも、ものすごくきれいにつながります。


☀️ 「太陽の暦」と「生きものの暦」

私はこの二本立てで整理すると、とても面白いと思います。

太陽の暦

夏至
↓
秋分
↓
冬至

これは天体の運行なので基本的には動かない。

一方、

生きものの暦

発芽
↓
開花
↓
結実
↓
渡り
↓
冬眠

こちらは気温、水、日照、積雪などによって動く。

そして今、

天体の暦と生物の暦の間隔が変わり始めている。

これは、かなり大きな「地球環境の変化の見せ方」になります。


だから、ヒガンバナを観測してみたいですね

世屋でも宮津でもいい。

毎年、

同じ場所・同じ群落・同じ数地点で、

  • 最初の一輪
  • 10%開花
  • 50%開花
  • 満開
  • 終花
  • その年の8~9月の気温
  • 地温
  • 降水量
  • 日照
  • 草刈り時期
  • シカの食害
  • 土壌の乾湿

を記録する。

すると10年後、

「今年は遅かった」

という感覚が、

「この場所では開花開始日がこれだけ動いた」

というデータになります。

気象庁自身も、生物季節観測を「季節の遅れ進みや気候の違い・変化をとらえる」ためのものと位置づけています。

そして、これはまさに安田さんのやっている自然観察です。

「彼岸花が彼岸に咲かなくなった。」

という一見小さな変化から、

「太陽の暦と、生きものの暦がずれ始めている。」

さらに、

「私たちは、季節を何によって知ってきたのだろう?」

まで行ける。

そして最後に、

「この景色の中に、地球の物語がある。」

へ戻ってくる。

……いやあ、ヒガンバナ、なかなか侮れませんね。(^.^)

IMG_20260924_144230[1]

30by30アライアンス参加者の皆様

茜色(Madder Red)× 雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

暦の上では「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」。激しかった夏の雷がようやく収まり、空が一段と高く澄み渡るころを迎えました。……とはいえ、すっきりとしない長雨が続いて、どこか落ち着かない日々を過ごされている方も多いかもしれませんね。そんな今の季節、ふとした雨上がりの夕暮れに心をじんわりと満たしてくれるのが、深く温かい「茜色(あかねいろ)」の夕焼けです。すべてを包み込むような赤い空を見上げていると、「今日も一日がんばったな」と、自分を優しく褒めてあげたくなります。まもなく迎える秋分の日。茜色の空を眺めながら、心と体のバランスを優しく整えてみませんか。自然の穏やかなリズムを感じながら、健やかでホッとする日々を過ごせますように。

このページのトップへ