宮津エコツアー · 3月 2012

3月 2012

 二週間かけて登ってくる桜前線
           2012.3.27
 桜前線、公式用語は「開花期日線」というそうですが、宮崎、高知、静岡を皮切りに、桜前線はスタートします。今年は、3月21日に高知で開花したそうです。今後、3/27福岡 ・ 3/30名古屋・3/31京都と北上の見込みだということです。近くでは、4/5が舞鶴。
 世屋・松尾の桜開花も問い合わせがあります。松尾の溝口平一郎さんに問い合わせたところ、 20日ごろという返事でした。海岸から2週間かけて標高400mの世屋の里へ登ってくるのです。また、今年の花芽の状態は良い、去年はウソが花芽を食べた、木の下が食べ散らかした花の鱗で黒くなっていた、そんな様子がない、期待できると思っているとのことです。
 一方、北上する期日線は、4/14・新潟、4/17・仙台へ到達して20日ごろは、山形から岩手を結ぶラインにあるとの予想。
寒さ厳しく雪の多い冬をすごしましたが、気象庁の全体的な見立てでは、この冬の寒さは、桜の花芽をスムーズに休眠から目覚めさせているとも言っています。これまでの寒さで生長が遅れていたこともあり、平年より少し遅い時期に咲く所が多いけれども、この先は暖かな日が少しずつ増えるため花芽は順調に生長するでしょうと。

  「真の言葉」。最近、触れた二つの言葉
                                            2012,3,26
 見るともなく見ていたテレビが、こんな言葉をいいました。
 「もうちょっとな女の子」
おもしろいこというなあと思いました。
おもしろいと思わせる言葉は、詩的な表現です。
さて、そんな詩的な表現でも、二通りあるようです。
人を哲学させ行動させる力を持った説得力のあるものとそうでないもの。そこを分けるのは、 たくさんの躓きと知見と感動が凝縮したものかどうかかなと思います。躓き、立ち上がり、知見と感動が凝縮した、そんな言葉を、宮沢賢治は、こう表現しました。「真の言葉」。最近、触れた二つの言葉、それはまぎれもなく、(少なくとも私にとっては)  「真の言葉」です。
一つは、
「里山は命の鼓動にふれその尊さを知ることのできる場所」、
「里山は人々の温かな心が命を育む空間」
「自然と生きる知恵が溶けこんでいる里山の風景」
語ったのは、氏家さん(NHKテレコムスタッフディレクター)。
  これを読むと、
・命の鼓動に触れられるんやて! はよはよ 触れさせてー
・命の尊さを知ることが出来るんやて! うっそー どうやったら知ることができるのー
・命を育む温かな心! ええねえ 素晴らしい 私ももちたい!で、具体的な例ではなに?聞きたいわー
・里山の風景には自然と生きる知恵が溶けこんでいるんやて!
すごいすごーい で、それってねえねえどういうことー?
そんなふうに心をかきまぜます。あげく、まずはいってみよう、里山に!
・・・・私の期待かも知れませんけど!!。

もう一つは、里山を訪れたお客さんにはぜひとも紹介したいと思っている詩です。

   『百姓ってしってるかい』
春 
耕耘機が ガアガア 田をすく
親子ガエルが ギャロギャロ
カニさん ニョキニョキ
タニシさん スースー
ちょっと そこ どいてくれ

田の草取り ザアザア 音がする
セミさん ミンミン
トンボさん スーイスイ
血を吸うアブは小憎たらしい
トンボさん とんできて
パクッとアブを食う
秋 
鎌でバシバシ 稲を刈る
黄金の稲穂 ブラーブラ
ススキさん フラーフラ
餅稲さん ブラブラ
あの雲美味そう 食っちゃうぞ
冬 
ヨイサホイサ 雪すかし
ヒヨドリ  ピーヨピヨ
吐く息 白い

お袋が言った 
百姓の仕事は百色
春夏秋冬百色の仕事
そんな仕事が嫌いでなくなった
・・・・・・・・
描かれている世界は、里山そのものです。
  親子ガエル カニ タニシ 草取りの音 セミ 血を吸うアブ
アブを食うトンボ 稲刈る音 揺れる稲穂 ススキ 餅稲 雲 雪すかし ヒヨドリ  吐く息、、、 ここで取り上げられているものは、里山の命の鼓動そのものではないですか、その命といっしょに暮らす仕事として百姓を自覚したことで、締めくくられています。
作者は?
宮沢賢治!ノー 金子美鈴! ノー
私たちにとって身近な人です。
  世屋の里の今日をつくってきたたくさんの里山の人々の中でも、もっとも「若い」A君がその人。彼も「里山の人々」の仲間入りをするかどうか迷い悩んでいた時期がありました。もっとも強くなったのは20歳ごろ、その迷いを吹っ切ったのは、24歳になったころといいます。そのころにこの詩はかかれました。いわば、この詩は、里山の人になる百姓宣言!
 先日再放映された新日本紀行『小さな花の歌~丹後・上世屋』は春の田で、耕運機で田を起こす青年の姿をエンディングとしていますが、額に汗するその表情には農業への何の迷いもありません、内面を活写したカメラマンの目のすごさを感じます。

ちなみにそのころこんな詩もしたためています。

「ある秋の日」

最後の稲刈りをしていた田に
「お前を刈り取ったら、僕は来年の四月までやすまれるんだで」
といったら、田んぼが答えました。
「僕だってこの稲、刈り取ってもらったら、来年兄ちゃんが声をかけるまで、寝ていたらいいんだでー」
山の木まで、
「兄ちゃん 僕も木の葉が落ちたら、来年、兄ちゃんが山へ仕事に来るまで休まれるんだで」と。
いる いる。
畔なみ君も、畑も、あぜも、道も、あぜ草までが!
なんだ、
ぼく一人かと思ったら、おおぜい友がいるではないか。
「お前たちー 白い雲 - 雲なんかに負けるなよー!」
「来年も がんばって豊年にしようよー」

  ※「お前たちー 白い雲 - 雲なんかに負けるなよー!」
   この言葉が、黒坂正文さんの、「おーい雲よ どこへ行くんだい 太郎山の向こうまで おーい 雲よ どこへ 行くんだい 私は ここにいる」と歌う『おーい雲よ』制作のきっかけになりました。

 「親子アマガエル」
畔付けしていると
背中に子供がのったアマガエル
ほらほら 危ない あっちいけ

耕運機で田をすいてると
アマガエルが真剣になって逃げている
耕運機を止める
四、五日 天気にしてくれと

       ※産卵のためオスがメスの上にのっている状態かもしれません。
         オスメスの大きさはかなり違います。ひょっとしてモリアオガエルかも。
         同じ緑色なので、よく間違われます。

  「カニ」
カニがあぜ道を歩いている
百姓の敵だ
畔に穴を開ける
ナンマイダ ナンマイダ
グチャ!

里山・命の鼓動にふれ、その尊さを知る場所!
2012.3,25

 昨夜からの雪起こしの雷鳴、そして今日の降雪。日置からばっさかまでは、問題なし。宮ノ下あたりから轍が出来はじめ、村では約15Cm、標高400mの実力です。岡の上を巻いて滝の上の新観音さんあたりからは20Cm、除雪車がほしいなあと思う積雪でした。 先日の温かい日の明くる日、自動車屋から℡がありました。
「タイヤ交換しませんか」
「4月に入ってから」
正解でした。
 とはいっても、もう3月下旬、里山が春を迎えようとしているその24日。ある番組がNHK・BSで放映されました。
『里山を未来に伝えよう』。取材・岩田有正!ディレクター・氏家力!二人は、世屋の里をとりあげて紹介してくださったテレコムスタッフの方で、日本の里山をとらせたら並ぶもののない黄金コンビ、その製作です。 里山の今日的意義を踏まえて里山の現在から過去へ遡り未来を展望する内容、里山復活への応援番組です。
放映時間がハンパではありませんよ。どれくらいだとおもいます?(解答をすぐに言わない習性が身に付いてしまいました、)
にじかん? ブー!
さんじかん? ブー!
よじかん 四時間ですよ
その四時間番組の「とり」はコウノトリがつとめました。
 豊岡では今40羽、自由に飛び交っている。そのコウノトリが自分が住める環境を探して飛んでいく、その先百カ所。コウノトリは幸せを運んでくるその誘致合戦が広がっている!オリンピックやワールドカップのように金を積まなきゃきてくれないというものではない、環境、生態系を豊かにするだけで、幸せを携えてコウノトリはとん出来てくれる、五十日だった、住み着いてもらいたい百日にしようと、コウノトリが住める環境を作る取り組みが全国に広がっているとの紹介を踏まえ、エンディングへ。ここでは、この番組の意図が繰り返し、人を代えて語られていましたが、紛れもなくディレクター氏家力さんの言葉です。聞き入ってしまいました。きちんと計算された素敵なクライマックスなので、再現しておきます。 その始めをやるのは今森光彦さん。
「コウノトリ復活の土台は環境作り、かって水田は、子どもが魚や虫を捕り遊ぶ場所でもあった。たくさんの関わりがあった。環境をダメにしたのは、田圃は米を作るところ、そんな価値観の単調化。これからは何らかの形でかかわって、使うという参加型に変えていくことが出来るかどうかが課題だ。」と。それを鷲谷いずみさん(東京大学)が「コウノトリが、何が大切か教えてくれた気がします、農業のやり方も変わっていく思います」とサポート。
それをうけて、アナウンサー。
 「自分たちは、恵まれた環境にいたのにつたえてないなと思うんです、こどもたちに。例えば、田圃にいっしょに稲を植えに行こうとか稲刈りしてみようとかそういう体験させてあげるきっかけを大人たちが、私が作って、いっしょにいこうよと出かけることも大事だと思いました。出かけていきたいと思います」と女性がしっくりと語り、男性アナが落ち着いた口調で
「みなさん、どんどんでかけて触れるところからはじめてみてはいかがでしょうか」と呼びかけます。
 ここから最終章、音楽が入ってナレーションと映像のコラボレーション・・・・・ (Nはナレーション、 ①~⑤は、宮崎良子さんなど著名な文化人の語りです。)・・・・・・・・・・

N 日本全国人の暮らしの数だけある里山、
① 自分の近くの一番すばらしい景色の見える里山探していらっしゃい!
N 里山は、命の鼓動にふれその尊さを知る場所です
② わくわくしてどきどきして時にはのんびりリラックスして
N 里山は人々の温かな心が命を育む空間でもあります
③ 優しさがものすごくいいですねそれからねいやしというものを里山に感じます
N 培われてきた自然と生きる知恵が風景に溶けこんでいます。
④ やはり古里の変わらない景色風習とかもそうですけれどもそういうのはやっ  ぱり次世代がまもっていかなきゃいけない
N 次の世代へと伝えたい未来への贈り物です
⑤ 子どもたちが水辺でわいわいと遊んでいる、そういう風景です。
N 皆さんもそんな里山、見つけてみませんか
・・・・・・・・
このように終わります。
「里山は命の鼓動にふれその尊さを知ることのできる場所」、
「里山は人々の温かな心が命を育む空間でもあります」
「里山の風景には培われてきた自然と生きる知恵が溶けこんでいます。」
 これは、全国の畦道、草道、山の道をくまなく歩きつぶさに見て歩いた氏家さんだから言える言葉なんだなあと聞きました。全国のエコツーリズム関係者、がんばれ!そんなメッセージが聞こえるようです。
 せやの里でも自主製作・ガイドウオークのパンフレットがまもなく完成します。ネットでも公開します。「どれどれ ほんならちょっとみせてもらおう」とやってきていただけることを期待し、しっかり準備していきたいものです。

■ 『里山を未来に伝えよう』どなたか、録画されている方おられませんか。実は、録画に失敗(あーあ)。再放送があれば見のがさないようにと思います。(Mさんへ、最後のナレーションは、聞き応えがありますのでぜひごらんになってくださいね!)

「カエデプロジェクト」
2012,3,25

 大江山のぶろぐを拝見。 春を待つ命を守って冬をしのぐうりはだかえでの芽。一カ所から対にでている枝、その小枝の中程のくびれ、さらに枝先の二つのふくらみの大きさの違いなど、いろんな情報をとらえられていて、さすがに心得のある人の撮影だと感心しました。なかなかそういうことをきちんと押さえられません。
 「秋に綺麗に紅葉する。杉山の山肌を彩ってくれます。」と芽が花になり葉になり色づくという変化をまとめようというシリーズです。さらにこれから充実していくのでしょう、楽しみです。
さて、そのカエデ類、世屋高原を構成する定番の植物です。否応なくガイドの対象!さてどうするか!人にとってどういう意味があるのか、といえば、薪、さらにかっては炭にして、今はチップ材として山ごと売るという形で現金収入にあててきたということです。つまり、雑木という位置づけ。それを「新しい資源」にしようとする取り組みがあるそうです。
 こんな話です。・・・・・・
取り組んでいるのは、埼玉県秩父市内の製菓業者(おかしな会)の皆さん。動機は、秩父の特色を打ち出した菓子をつくりたい!イチゴ、シイタケ、キュウリ、ブドウなどの地域の特産品がまず検討されたが、すでに余所がやっている、窮してしまったところで、カエデが囁いたというのです。
『私を使って下さい。』
え?
『シロップをとってください』
シロップって、メープルシロップ?
『そう、メープルシロップ』
だって、あれはカナダの!
『いいえ、私からも出せるのよ』
えーーーー!!
カナダは寒さが厳しいので、メープルの木は、冬に備えて夏の間にでんぷんを生成して蓄え、そのでんぷんが糖分に変わるのだそうです。雪にあたったダイコンやほうれん草が甘くなるのと理屈は同じで、細胞を守るためのアイデア。考えてみたら、樹液は、いたやカエデからもでるが、うりはだかえでからでる、おおいたやめいげつからもでる、やまもみじからもでるわけで、冬の寒さに備える仕組みも共通に備えているはずです。採取時期は2月から3月。日本でも2月の「なきいたや」という言葉があるそうです。厳寒の時期です。理屈に合っています。
昔、インディアンの糖分として貴重なエネルギーとして使われていたメープルシロップを、カナダに入植してきたフランス人が教わり、カナダで広がといいます。秩父は寒さの厳しい山の国、樹液が活用出来るなら資源の山にかえられる!自分たちもそのフランス人になれるか、おそるおそる試みが始まったというわけです。
樹液の採集方法はこうです、、、
・ 木に1cm弱の深さの穴をドリルで開ける。
・ これに管を差し込み、石油用のポリタンクに入れる。
こうして、 1本のカエデから、10日で1kgの樹液が採取でき、煮詰めて50gのメイプルシロップがつくれたそうです。
「いけるなあ!やれるぞ!」
 ここからから立ち上がったのが、「秩父・カエデプロジェクト」
NPO法人や大学で素材研究が行われたり、さらには、カエデの植林にも取り組んでいる。秩父は花粉が発生しやすいスギなどが多かったが、カエデを植え、スギを伐採し、バランスの取れた植林を行うことで、環境整備にも役立っているというのです。さらにカエデを通じて、カナダの都市と提携し、中学生、高校生の留学交流をしたり、カナダで林業を体験できるツアーなども検討されているとのこと。
肝心のお菓子への活用、これはばっちり。カナダでは、お菓子はシロップ、クッキー、チョコなど限られているが、秩父では名産の養蚕をイメージしたマシュマロ「ちちぶまゆ」をつくった。これを05年に研修目的でカナダに渡航したときに持ち込んだところたいへん喜ばれた。
・・・・・・
「お菓子な会」の中村雅夫専務理事から部会の皆さんに【コメント】が届いていますので、紹介します、(これは架空!)。
『一寸の光を見つけようとすることが大切。ただ素材を生かしたものを売り込むだけでは弱い。お菓子にいろいろな「ものがたり」を織り込むことで、それが土産話になり地域のファンを増やすことにつながる。また手探りの中で、一寸の光を見つけることも大切。』
いや、味のあることを語っておられるなァと思いませんか。
一本のカエデからでもお客さんと夢を語り合うことができるんですね。そう出来たら、楽しい一日になること間違いなし。

里山に春を広げる穴
2012,3,24

厚く積もった雪に覆われた棚田も、3月も半ばになると雪が割れ、穴が開きます。前の年の切り株も顔を覗かせます。
 雪がみぞれに変わり、純粋に水だけの雨が降るようになったら、傘をさして静かにその穴を見つめていてください。雨や風や自然の音を聞いているうちに、その音に混じる不思議な声に気づくはず。
きゅるるるるきゅるるるる。
声の聞こえる穴を見ると 水面が水紋を描きます。
何かが動いたのです。
カエル?
そう 蛙です。ヤマアカガエルの産卵。
せやの棚田は、三メートルもの雪に覆われても、水を貯めたまま冬を越す張り水田圃。その水は、至るところからでている湧水。10数度の水温を保っています。その湧きだし口付近から雪が解けるのです。
きゅるるるるきゅるるるる。きゅるるるるきゅるるるる。
声が声を呼びます。
きゅるるるるきゅるるるる。きゅるるるるきゅるるるる。
きゅるるるるきゅるるるる。きゅるるるるきゅるるるる。
オスたちがメスを奪い合う蛙合戦が始まったのです。
さながら子どもたちのプール解禁一日目状態。オスを背に載せたメスはやがて泥の中にじっと身を潜めます。
 この声を聞いたら 次の日も訪れるんですよ。その穴の中には、黒い塊が光っているはず。新しい年の命の塊です。棚田に開いた穴は、命のゆりかご。里山の春は、この穴から広がっていきます。

■ ヤマアカガエル
 丘陵地と山間森林内および、その外縁部にある池、小川、湿地、水田に生息します。
昆虫類や節足動物、貝類、ミミズ等。幼生は雑食で落ち葉や水草、水生昆虫、動物の死骸等を食べます。ニホンイノシシ、動物食の鳥類、ヤマカガシなどの食肉類が、天敵です。人間にも食べられました。
 ヤマアカガエル、ニホンアカガエルは水底の泥の中で冬眠しているそうです。早春に湿地や水田に粘着性がある寒天質に包まれた卵を産みます。その数は1,000個以上。大量に産んでおけば食べられても食べられても数匹は生き残り、種をつなぐことが出来るという戦略です。
 一晩のうちに複数個体が1つの水場に集まり集団産卵することもよくみられます。卵は14日程で孵化し、5-8月ころに変態し、幼体になりますが、成体になるには2-3年程かかります。
京都府要注目種です。水田周辺の環境変化が、生息数に影響しています。
 メスを巡って鳴くオスの声を「ハルウハルウルル」と表現した人もいます。最近はユーチューブで聞くことも出来ますよ。貴方はどう表現しますか。

月は東に昴は西に、いとし殿御はまん中に
               2012,3,24
 江戸三大俳人と言えば、松尾芭蕉、小林一茶、与謝蕪村。すぐにそれぞれの代表作が浮かびます。しかし、松尾芭蕉、小林一茶は人によってかなり違うのではないでしょうか。それに対して、蕪村さん(1716-1783年)の場合は、どうでしょう 。はしたてや 松は月日の こぼれ種! 期待はしても、おそらくあり得ない、10人に問えば7,8人がこの歌を浮かべるに違いありません。
「なの花や 月は東に 日は西に」          
 では、この雄大な光景をどこで蕪村さんはみたのか、その疑問について、実は、ヒントを丹後の民謡から得たのではないか、と推測する研究者があると言います。中学生のころから蕪村にひかれて研究を続けてきた森本哲朗氏。彼は、丹後民謡にある「月は東に昴は西に、いとし殿御はまん中に」という唄を挙げます。
 蕪村さんは「むかし丹後宮津の見性寺といへるに、三とせあまりやどりけり」と『新花摘』に書いたとおり、三九歳のとき京から丹後へ移り、丹後から京へ帰って姓を与謝と改めたと言うことです。丹後在住の折りには地元の俳人と交流し、盆の踊りなどにも参加したことでしょう。そんなときに歌われる言葉の一つ一つを記憶にとどめた言葉の達人の心の中で、「殿御」のかわりに「なの花」を配する構想が浮かんだのではないかと森本さんは想像したのです。
 一般的には、「東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾ぶきぬ」(柿本人麻呂・万葉集)を踏まえた発想であると言われるようです。構図としてはつながるとは思います。しかし、その歌には「いとし殿御はまん中に」はないじゃないですか。この俳句の発想は、私達丹後の民謡にあるとする説に賛同したいです。地域への興味を新たにする気分にもなります。それにしても、「殿御」のかわりに「なの花」を配したとしたら、菜の花にどんな思いを託されたのでしょうか。叙景を超えたなまめかしさを感じます。
 丹後半島はかっては、奥丹後半島、さらに遡れば与謝半島とも呼ばれていたそうです。その半島を覆っている雨雲、もう菜種梅雨に入ったのでしょうか。
■ ちなみに・・・・
 蕪村さん、菜の花をいくつも詠みこんでいます
  ○菜の花や 鯨もよらず 海暮ぬ
  ○菜の花や 摩耶を下れば 日の暮るる
   (「摩耶」とは六甲山系の摩耶山のこと)
  ○菜の花を 墓に手向けん 金福寺
研究者によれば、いずれもこの菜の花は在来種アブラナであろうとされます。
 河川敷や堤防、空き地に大きな菜の花畑ができているところがあります。あれは、丈夫で川原や荒れた土地にも繁茂するセイヨウカラシナ。修景用に播種して育成することもあるそうです。null

丹後半島は菱形ブロック
2012,3.24
 大宮町三重から見る内山景観は、文句なく素晴らしい。府道を森本、明田、五十河へと動けば、印象が少しずつ変化するのもおもしろい。 啄木が「山に向かいていうことなし」と謳う私の山をあげるなら間違いなくこの山になる。一番雪の雪化粧、夕陽を浴びた山塊、雪解け模様など、魅力は尽きない。そんな光景を撮った写真を見た人が、「立山連峰へいかはったのか」と聞く。雪をかむって正面に立ちはだかる壁は連峰の趣を備えている。
 さて、視点を変えて上から見ると、丹後半島は菱形をしたブロックなのだそうだ。地震学者で元京都大学総長の尾池和夫さんが「丹後半島の旅」で記しておられる。そういわれて、「にしがき」の地図を見ると、確かにそうだ。網野町浅茂川から野田川四辻、野田川から伊根、伊根から経ヶ岬、経ヶ岬から網野町をそれぞれ辺にしている。
 そのブロックがちょうどKTRの路線を境にするように西側の陸地に接してしている。東北大震災でみんな地質学者になったが、そのプレートテクニクスの理論では、そのブロックが、変形圧力を受けている。圧力が同じ方向に働いていれば問題はない。ところが丹後半島ブロックは舞鶴側から丹後町方面にかけての方向に、西側ブロックは久美浜町から内陸方向に向けての圧力を受けている。専門家は、これを「第四紀になって、丹後半島にはほぼ東西方向(舞鶴側から丹後町方面にかけての方向)の圧縮力と、ほぼ南北方向(久美浜町から内陸方向)の引張力が働き、地殻には北東から南西方向に走る水平右ずれの活断層と、北西から南東方向に走る水平左ずれの活断層が発達した。」と説明する。そして、このような地形を水平上下に変動させる運動が数十万年続いており、1927年(昭和2年)の北丹後地震を起こすなど現在に至っていると言う。一見静まりかえっているような山塊も、内部に目に見えない緊張を秘めている。
その内山を見る場所を最近新たに「発見」した。
 まず、三重のお寺万歳寺。境内に地蔵が立つ。 裾にまつわりつく子ども、抱く子どもに注ぐ眼差しは実に優しい。建立は平成20年、石工さんは地元の方。腕は確かだ。その後ろにサクラの木、そのサクラ越しに内山を望むことができる。 
 もう一カ所は、万歳寺の右手上にある三重の愛宕山。急な石段はスキーのジャンプ台を思わせる。尾根道を少し辿れば神社がある。眼下には圃場整備された森本田圃が美しく、視線をあげれば正面に内山。おおぶなはあの尾根のあのあたりだ、あの尾根からここが見えるのだと楽しむことができる。 知る人ぞ知る一押しのビューポイント。

「ワサビ食う虫も好きずき!」
2012,3.23
ここたんが開催されていたのは、ちょうどお彼岸。合力の家では、塩ぼた餅を振る舞って頂きました。ちょっと砂糖を添えてもらって。貴重品だった砂糖の思い出話が弾んでいました。
 19日には、お薄もいただきました。Kさんが、都合をつけてセットを携えて参加して下さったのです。囲炉裏端で、しゅんしゅんと湧く茶釜から徳さんの手作りひしゃくで汲み上げられ、手際よく立てられた液体は、ブナの新緑色でゆったりと盛り上がっていました。
お茶請けには手作りの、サクラ餅と椿餅。何とも贅沢な一服をいただき、サクラ餅の葉の塩味のまろやかさを口の中で楽しみながら、心の中では、中学校一年生の国語の教科書に載った、植物学者・岩波洋三さんの話を思い出していました。
それは、「花の香りは昆虫を呼び寄せるためであるが、葉や茎、根や実から出るにおいには、どんな役割があるのだろうか」と問いかけ、「植物のにおいは彼らが進化の過程で身につけた自衛のための武器の一種」であることを明かす説明文教材です。その結論を得るために行った実験や観察の記録がさすがに教科書、精緻でいて簡潔なのです。そして、そのような作用を持つ植物のにおいを人間は昔から、病気の治療や予防、食品の保存に活用してきたとして、例に挙げられていたのが、笹餅、ちまき、そして桜餅。その時は、「教材の準備」にお金がかかったものでした。昭和62年初版の本ですから、年齢で言えば40歳前、今から25年ほど前に中学生、だった方には頭のどこかに記憶が残っていらっしゃるかもしれません。
 植物のにおいの力を試す実験の中で印象的だったのは、ミツバチを使ってワサビのにおいの力を試す実験です。こう書いてありました。「おろしワサビ(5グラム)を入れたシリンダーの中では、一分後にはもう飛ぶ力を失って網の上に落ち、二分後にはひっくり返って動かなくなった。」ミツバチも気の毒なことでしたが、文体の小気味よさには酔いしれたものです。
 さて、そのワサビが、世屋の里の雪ズリの斜面でもう葉を伸ばしはじめています。
それを写真に撮りながら、むらむらとわき起こってきたのが、例によってガイド根性。
『お客さんが見つけました。なんですか。ワサビです!』ガイドとしては、ここで組み立てなければならないじゃありませんか。そこで、お客さんを想定してのワサビ話。
◇◇◇◇
つかみはこれでしょう! 「ワサビ食う虫も好きずき!」
・・・・ワサビといえば水、砂地などの透水性のところでないと生えません。水温で言えば16℃以上になるところはダメ。ワサビといえば辛い、 根っこも辛けりゃ、葉っぱも辛い、辛さにおいては、ひけをとらないのがタデ、たで食う虫もすきずき、さて、ここで。ワサビ食う虫も好きずき!これを食べる昆虫はいるでしょうか。いないでしょうか、 いるんですよ。モンシロチョウの幼虫(青虫)。あのかわいらしいのが人でも涙を流すこの辛さになんで耐えられるのか、そこがワサビ食う虫も好きずき!なんでかというと、ワサビはアブラナ科の植物だから。キャベツと同じなんですよ。青虫になってかじってみましょうか!
・・・・まず葉の話でうけたとして第二弾は根の話。根を掘り、場所や条件によりますので当然慎重に扱いながら、抜き取った株を見てもらい、感想をもらう。期待するのは、大きいとか小さいとか。山に自生するワサビは、静岡などの栽培ワサビと大きさを比較すれば、地球と月ぐらいの差があります。栽培ワサビを知っている人は、小さいと反応されるはず。「こんなに小さいの?」種類としては同じなのに、大きさという形でこんなに顕著な違いが生まれているのです。
 「それは、何でだろう」というところへ持ち込めば、ガイドの勝ちですね。水ワサビの根は大きいが、畑ワサビや自生種のワサビの根は小さい。その種明かしをするだけです。
 しかし、その前に、方や流水で純粋にワサビだけを栽培する生育環境、方や他の植物と泥土を共有し競争しながら生きる環境とを思い出してもらっておくといいかなあ、と思います。
山の土壌の中には、たくさんの菌が生育しています。その菌と植物とは、共生しあって生きています。片方がなくなれば片方も生存出来なくなる理屈があります。ある種が、ここで自分だけが生育したいという野望を持つとすれば、その実現のためにどのようなことを考えるか、と言うことです。お客さんに質問してもいいかもしれません。貴方でしたらどうされますか?答は容易にでると思います。「共生関係」を壊せばいい!
 素晴らしい、その通りと持ち上げておいて、実はその通り。「ワサビは、周辺の土壌を殺菌し、根に菌を住まわせる必要がある一般的な植物が生えないようにしている物質を根から放出しているんですって。」その物質はなんというのですかと質問される可能性があります。念のため「アリルイソチオシアネート」とメモして持っておくといいかもしれません。しかし、ここでお客さんに百点満点を与えてはいけません。問題はその物質をワサビが出すこととワサビ自身の大きさとの関係です。でも、その答えももう簡単です。
この物質で、周辺の土壌を殺菌し、根に菌を住まわせる必要がある一般的な植物が生えないようにしているが、ワサビ自身もこの物質によって大きくなれない、自家中毒って言うそうですが、生存競争というのは肉を切らせて骨を断つというか、きわどいものがあるとしみじみというと感動が深まると思いますよ。ここまで来ると、ワサビを大きくするためには、自家中毒の原因物質を取り除いてやればいい、つまりアリルイソチオシアネートを洗い流すための仕掛けを作ればいいと言うことになるわけです。流水と透水性の良い土壌がそれなんです。
・・・・
あとは、時間に応じてワサビをおろす時は目の細かいサメ肌のおろしで、頭(茎)の方から練るようにすりおろします、等とそれぞれのうんちくを傾けると言うことでどうでしょうか。◇◇◇◇

雪は貴重品
2012.3,23
  世屋に上がるときは、日置のスタンドで給油します。ローソンなどではしません。他愛ない会話が楽しいのです。
寒いなあ温いなあ、世屋はどうだゃあなあ!天候や花情報など季節の自然現象がよく話題になります。冬の話題は、雪です。もう降ったきゃァ、まだあるきゃァ。
 「もう日置では雪は貴重品だ!」
開花の遅れている梅も日置では七部咲き。
「そうかぁ 木子の雪持って下りて来たるで、ガソリンと交換してくれるか!」ガソリンの値が上がっています。
おちょくったり、おちょくられたり、他愛ない春の会話です。
 世屋に上がりました、雪を踏んで出入りしていた達雄さんの玄関先まで通路が開いていました。ちずこさんが残り雪をすかしておられました。
「ようとけましたなぁ」
「まんだまんだあるでえ」
屋根ずりの雪を見ると「まあなかなかだけど、」と言わざるを得ません。「そうだなぁ、日置もっていったらガソリンと交換してくれるだってぇ。」ちずこさんが笑ってくれました。
 畦でも春の面積が拡大していきます。そこに顔を覗かせている芽は、やぶかんぞう。子どもの小指の大きさながら、すでに夏の開花へ向け人生一直線の気風を漂わせています。

♪どこかで春が生まれてる 山の3月東風吹いてどこかで芽の出る音がする♪そんな風情の世屋の里の今日この頃。
■ヤブカンゾウ Hemerocallis fulva var. kwanso (ユリ科 ワスレグサ属)
  7〜8月に、茎頂にユリに似た橙赤色で、重咲きの大柄な花を咲かせます。ヤブカンゾウは中国原産の多年生草本であり、栽培されていたものが野化している、ということです。。花は八重咲きで、つまり、3倍体なので結実しないのです。 匍匐茎(ほふくけい、ランナー)を出して拡がり群落を形成します。 堤防や小川のほとり、耕作地の周辺など人家近くに点々と生育が見られますが、過去に栽培されたものが生き残ったり、河川の氾濫にともなって流されたりしたものであろうとされます。
若葉と花は食用になり、乾燥させて保存食とされたり、また、利尿剤として民間薬として利用されたということです。
よく似た種のノカンゾウの花は一重であり、結実します。別名のワスレグサ(忘れ草)は、花が一日限りで終わると考えられたため、英語ではDaylily、独語でもTaglilieと呼ばれる。実際には翌日または翌々日に閉花するものも多いということです。

「里山賛歌」取り組み進む!
  ~世屋の春を楽しむ会に向け~
           2012.3/23
4月30日の世屋の春を楽しむ会に向けて、チラシやパンフレットが印刷の運びになりました。関係者の皆さんにたいへんお世話になりました。これから、一ヶ月の勝負です。
参加費は3,500円としておりますので、ご承知ください。 昨日、プログラム第一部の発表でナレーターをお願いしている三宅さんと音楽をお願いしている安田守彦さんといっしょに、シナリオと写真との読み合わせをしていただきました。七時から九時ごろまで、それはそれは「充実」した時間でした!!シナリオの内容が、ほぼ、確定できましたので、紹介させてもらいます。
タイトルは『太陽と土と木と水と風の村のアルバム』、
・・・・・・
   プロローグ
一章
水が落ちて、土を潤す 森
風が そっと通りすぎる 空
畦道の 小さなささやき
林の梢の かすかな呼びかけ
心すまして 聞いてごらん。
※聴く間を作る
それは 移ろう季節が 大地を歩く音
見えなかった色。 気がつかなかった香り
人と 自然が いっしょに刻んだ 歴史

   二章 回想 ①
雪が解けたら 春祭り
わかいもんにはまけん
シナ事変にいきなったとうきっつあん
マムシに三回、咬まれたタツオさん
ブンジさん うれしげだ
マエダさんもおんなる
村中の子どもをとりあげてもらったんだで
村 総出の運動会

    三章 回想 ②
(間)
ブナの森の水で 米を作り
一握り 一握り 畔の草を刈り
背板を草の山にして
蕎麦を蒔き 藤の布を織り
命の水で結ばれて
太陽と土と 木と水と風の中で
家族を守り
力を合わせ、
里に燃え続けた 命の火

四章
(間)
ゆったりと 大きく呼吸しながら
草の道を、歩こう

  五章 ~エピローグ~
畦道の囁きが はっきり聞こえる
(間)
梢の呼びかけが 心に届く。
「この里は私達の希望だよ」
※希望の意味を内省させる時間を作る
人の命は縦の糸
自然の命は横の糸
だれかがどこかで 機を織る
長い長い 命の帯を織っている
・・・・・
エコツー憲章の趣旨を謳った詩と世屋高原休憩所開所記念の詩を突いて丸めた形で、構成しています。安田守彦さんの奏でるハープギターの音色と三宅さんの変幻自在の語りと60コマの写真で、世屋の里の『賛歌』を作りたいと思います。このあと、曲合わせ、間尺合わせをしていくことになります。スタッフの皆さんの頑張りで、エコツーの新しい財産に仕上がりそうな予感がしています。請う、ご期待!

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